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裏夢
夢現(ZONE-00 志萬)
毎夜夢に見るのは、罪のカタチ



耳障りな悲鳴
むせかえるような血の匂い
何もかもがリアルな夢で目が覚める。

「―――――っ」

まだ起きるには早すぎる時間にまた目が覚めた。

自分がこんなに弱いなんて考えた事もなかった。


俺は、志萬家の当主やぞ。こんぐらい…

脳裏に浮かぶのは、今まで狩ってきた魔物の姿だ。

目眩がする。
布団に潜り込んで直ぐにでも眠ってしまいたいのに…また同じ夢を見るのが怖い。


「志萬くん、大丈夫?」


ふいに響いた声は、そんなこちらの心中を察するように優しいものだった。

足音もなく近づくと、許可なしにベッドに腰掛ける。


「アサヒ…?」


恐る恐る名前を呼ぶと月光に照らされた顔が笑う。


「志萬くん」


アサヒは歌うように名を呼ぶと、安吾の頬に触れた。


じわりと、他者の熱が伝わる。

「アサヒ、何して…」

艶やかな黒髪がさらりと流れ、黒と金の髪が混ざり合う。

「ふっ…んっ、んー」

抗議の声は、くぐもったような悲鳴に変わった。

ちゅっ、と小さい音を立てて唇が離れる。

とろりとした、どこか夢現な瞳が安吾を見つめる。

「我慢、できないの。だってこれがあたしの本能だもの。」

だから…

ごめんね。

囁くような謝罪は、溶けるように消えた。






「んっ、あっ…アサヒ、やっ…め、」

拒絶の言葉を口にしたいのに零れるのはねだるような甘い声ばかり。

「心配しなくても良いよ。怖くないから」

耳元で囁く声は、何時も変わらず優しい音色。

余裕がないのは自分ばかり。その事実が余計に安吾を苛立たせる。

ヌルリとした舌が耳元から首筋を伝い下へ下へと降りてゆく。

「アサヒ、もうやめ…」

「今やめたら辛いのは志萬くんだよ?」

しっかりと自己主張する部分に触れながらアサヒは笑った。

耐えるように唇を噛み締めればアサヒの指が触れる。

「傷出来ちゃう…」

心配そうに呟くとアサヒはペロリと安吾の唇を舐めた。

「志萬くん、いれるよ?」

「えっ…ちょっ、待て…」




「アサヒっ!」

彼女の名前を呼ぶ自分の声で目が覚める。

「おはよ、志萬クン」
背後からかかった聞き慣れた声に振り向くと白狐がニヤニヤと笑っていた。

「…」

「よく眠れたかい?」

ニタァと口の端をあげて笑う様は奸計な狐を連想させた。

その言葉で自分が今まで夢を見ていたのだと悟る。

「…」

耳まで赤くなった安吾に白狐は笑いながら呟く。

「若いっていいね〜」

「うっさいわ!」







「志萬くん、今日はよく眠れた?」

朝食の席につくなりアサヒが尋ねる。その瞬間、夢に出てきた彼女の姿を思い出し顔が熱くなる。

「ねぇ、誰が出てきたの?」

目を輝かせるアサヒに背中を向け、安吾はある事に気づいた。

誰がでてきたの?
それはまるで今日見た夢を知っているような口振りだ。

「まさか、今日の夢は…」

「最近、眠りが浅いと言ってたからあたしが紡いだ糸で作った寝間着を用意しておきました☆良い夢見れたでしょ?」

胸を張ったアサヒにがっくりとうなだれる。

「ね、誰がでてきたの?」

「答えたくない」

ボソッと呟くとアサヒは一瞬固まり、申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめんね。でも大丈夫!志萬くんは美人だから何とかなるよ。」

「は?」

「愛に性別は関係ないよ!」

「はぁ??」

「男同士でもあたしは応援するからね!」

「…………アサヒ、何か勘違い・」

「若いって素敵だわ〜報われないが故、思いも深くなるのよね」

うっとりと呟くアサヒの言葉に白狐が腹を抱えて笑う。

「大変だねェ、あの調子じゃ一生気づかないよ」

励ますように肩を叩かれ、安吾は白狐を睨んだ。

「…」

「僕はちゃんと誰が出てきたかわかってるよ。あれだけ名前を呼べばねぇ…どうだった?夢とはいえアサヒクンを抱いたんだろ?」

その言葉に安吾から白い湯気がのぼる。

そんな姿を見てアサヒはしみじみと呟いた。

「志萬くんの相手は白狐だったのか!」



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


裏夢か…?微妙。
ありがちなネタでしたね(汗)

アサヒさん、お付き合いありがとうございました。

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あきゅろす。
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