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夢小説(トリブラ)
率直な言葉(ペテロ)


「よっ…」

全神経を指先に集中させ、アサヒはグイッと体を伸ばす。

ガリガリと指先が本の背を掻くが一向に取れそうにない。

「…シスターアサヒ。」

後ろから名を呼ばれ、アサヒは振り返った。

サラサラとした空色の髪が視界に広がる。

まぶしいくらいに綺麗な髪に目を細めアサヒは男の名を呼ぶ。

「ブラザー・ペテロ」

「うむ、かようなところで汝は何をしておるのだ?」

「本を借りに来たんですけど…届かなくて。」

そう呟く少女の側には、立派な脚立がある。

「それを使えば良いのではないか?」

「…嫌です」

チラリと脚立に目をやってからアサヒはうめく。

不思議そうな表情を浮かべるペテロにアサヒは、聞き取りづらい声量で答えた。

「自分が小さいのを認めるみたいで嫌です。」

「汝は、小さいと思うが…違うのか?」

思いっきりアサヒを見下ろしたままペテロは呟く。

無神経な発言にアサヒは、不愉快そうに眉を寄せた。

「ブラザー・ペテロと一緒にしないでください。」

プイッと視線を反らし、中断していた作業に戻る。

「これか?」

後ろから伸びてきた手がすっと本を引き抜き、アサヒ手に載せる。

「あ、ありがとうございます。」

少しだけ、感じの悪い言い方になってしまった気がする。

「礼など不要だ。」

しかしペテロは、特に気にした様子もない。その事に安堵して笑えば、ペテロの優し気な声が耳をうつ。

「他にあれば、手伝おう。」

「…大丈夫です。」

「そうか。」

ペテロの短い返事。

彼とは、会話が続かない。決して不快ではないのだけれど…どうして良いかわからない時も多い。

とりあえず、用も済んだし帰ろうと決めて頭を下げれば、ペテロが呟いた。

「シスターアサヒ。汝は今暇か?」

「え…まぁ…」

「よし、ならば某に付き合え」

半強制的な発言。

こちらの返答など聞きもせずにペテロはアサヒの手を引く。

エスコートというには、不躾な行動にアサヒは狼狽えるばかりだった。






「あの、ブラザー・ペテロ」

「何だ」

「あなたって甘党でしたっけ?」

連行されたに近い状況で座らされたカフェの席。

そのテーブルを埋め尽くすのは、甘いスイーツだ。

「いや、某は甘いモノは好んでおらぬ。」

だったらこれは何なのか…?

こちらの視線にペテロは一つ咳払いをするとアサヒの手にフォークを握らせた。

フォークとペテロの顔を交互に見つめる。

「女性は甘いモノを好むと聞いたが違うのか??」

「一般的に好きな人は多いと思いますけど…」

「もしや、汝は甘いモノが苦手か??」

「いえ」

「ならば遠慮など無用」

それは、食べろという事だろうか?

しかし、いくら甘いモノが好きでも限度がある。

これだけの量をどう処理しろというのか…。

一番手前の皿に乗ったにケーキにフォークをいれる。

上品な甘さが口の中で広がった。

「おいしい…」

「…気に入ったか?」

こちらに視線を向け、ペテロは口元に笑みを浮かべる。

そうしていると、日頃の猪武者の欠片も見えないのだから不思議だ。

まぁ、彼は名門貴族オルシーニ家の生まれだし…そういうものかも知れない。

「む、某の顔に何かついているのか?」

ペタペタと頬を触る男にアサヒは、首を振って答る。

「あの、ブラザー・ペテロ…一つ聞いても良いですか?」

「なんだ?」

「これは、どういう意図で…されているんですか?」

スイーツを示せば、ペテロはアサヒを見据えた。

「某は武人故、あまり女性の好むモノがわからん。」

「はぁ…」

「直接聞くのが早いと思ったのだ。」

つまり、誰か誘いたい人でもいる。という事だろうか。

「…それならシスター・パウラの方が適任だったのでは??自慢にもなりませんが…あたしそういう事柄に疎いですよ。」

アサヒの言葉にペテロは変な生き物でも見たような表情を浮かべる。

「何というか…汝は、ニブイな」

「にぶっ…?!」

さっきから失礼極まりないと思う。

人を強制連行しておいて、とすら思う。

「普通、気づきそうなものだが…」

「あたし、遠回しな言い方する人嫌いです。」

と嫌味たっぷりに返せば、目の前の美丈夫は苦笑する。

そんな姿さえ様になるのだから、腹立たしい。

何が?と聞かれても答えられないけれど。

ムスッとしたまま、ケーキにフォークを突き刺せば、ペテロはクックッと喉を鳴らす。

「何ですか?!」

キッと睨みつければペテロが笑みを深める。

「某は、汝の事が好きだと改めて思っただけだ。」

ペテロの言葉に顔が熱くなる。

「なっ…スキ…?」

「本当に気づいてなかったのか?」

呆れたような声。

「え…エスコートも出来ない男は対象外です!」

返された言葉にペテロは、また笑う。

せっかく言い返してもその顔がリンゴのように真っ赤では照れ隠しにもならない。

「アサヒ」

「何ですかっ?!」

恥ずかしいのか、悔しいのかアサヒが、泣き出しそうな顔で答る。

「汝のそういう所が、愛しいと思うぞ」

「―――――ッ?!」

少女の声にならない悲鳴は、誰の耳にも入る事はない。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

すみませんでしたァ!誰だこれは?!

アンケート頂いたペテロ夢

当初は、主人公に振り回されるペテロだったのですが、教授夢と似た展開になったので逆転させたら…こんな…ことに…

アンケート参加ありがとうございました。これに懲りずまた参加して頂けたら幸いです。

アサヒさん、お付き合いありがとうございました。

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