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夢小説(トリブラ)
読書週間(学園モノ トレス落)
※学園モノキャラ崩壊、百合表現あり



秋、それは一年の中でもっとも過ごしやすい季節である。

食欲の秋

芸術の秋

スポーツの秋

様々な秋を楽しむ中、図書部のアサヒはもっぱら読書の秋であった。

聖トリニティブラッド学園の図書室の入口には現在『秋の読書週間』という文字が掲げられていたが、図書室の利用者は相変わらず少ない。

そんな図書室の一角で赤毛の女子生徒は高らかな声をあげた。

「アサヒ、今週の日曜日暇?暇よね?暇に決まってるわ!」

聞きようによっては失礼極まりない発言をしながらエステルはアサヒに詰め寄る。

「んーっ…まぁ、特に用事はないけど…何かあるの?」

小首を傾げたアサヒにエステルは、頬を染めポケットを漁る。

「じ、実はっぶ・」

幸せそうなエステルの邪魔をしたのは小柄な男子生徒だ。

押しのけるというよりは、カウンターにエステルの顔面を押しつぶたような形で自身の用件を伝える。

「アサヒ、貸出手続を希望する。」

積み上げられた本を受け取りながらアサヒは静かな声を出した。
「トレス君、順番は守ろう。」

「否定(ネガティヴ)、彼女は図書室利用者ではない。」

「うん、でも女の子にそんな手荒な事しちゃダメだよ。」

「…………女の子」

コイツが?

と言わんばかりの目でトレスは潰れているエステルを見つめ頷いた。

「肯定(ポジティヴ)…(生物学上)女性と認識。気をつける。」

「うん、男の子は優しくないとね。」

にっこりと笑ったアサヒにトレスは小さな笑みを浮かべた。

「…アサヒ、今日の帰りも同行したい。」

要するに一緒に帰ろうという事だ。

「うん、一緒に帰ろう。」

そんな些細な約束に胸が高鳴る事を自覚しながらトレスはこくりと頷いた。

「後で、迎えに来る。」

そんな言葉で締めくくり、図書室を出るトレスに手を振りながらアサヒはエステルに声をかけた。

「エステル…大丈夫?」

「…はっ、畜生。あのデコッパチ、アサヒとの愛の時間を邪魔しやがって!」

復活するなり酷い言いようである。

「嫉妬ね。嫉妬なのね。あたしとアサヒがラブラブだからっ!う・「五月蝿いですよ。エステル、迷惑です。」

騒ぐエステルの頭に辞書を振り下ろしながら笑ったのはいつの間にか背後にいたシェラだ。

「シェラぁ〜…」

泣きそうな声を出したエステルを爽やかにシカトし、シェラは持ってきた本をアサヒに渡す。

「返却の手続きをお願いします。」

ふんわりとした笑みを浮かべたシェラから本を受け取りアサヒは目を細めた。

「シェラ、ちょっとこっちへ…」

くいくいっと指先でシェラを招き近づいてきた額にアサヒはペチンとデコピンをくらわせる。

「なっ、何ですか…いきなり。」

「落書きするなって言ったでしょう?」

シェラが持ってきた本を開きアサヒは呻く。

「落書きだなんて…添削しただけです。」

「登場人物の書き換えは立派な落書きです。」

そう呟くアサヒの手には可愛らしいイラストの描かれた恋愛小説が握られている。

突きつけたページには所々、鉛筆で名前が消され「アサヒ」とか「シェラ」「エステル」などの名前が横に書き足されていた。

「………消してから返却しなさい。」

全ての本を突き返しアサヒは呟く。

「アサヒ、でも原作より絶対こっちの方が面白いです!」

シェラの主張にエステルは机に置かれた本を取りめくる。


『……シェラ、愛してる。』

甘い声でアサヒは囁きシェラの唇に触れるようなキスを落とす。

『だ、ダメ。アサヒ、わたくしたちは決して結ばれる事ができないの。』

『エステルの事を言っているのか?あんな地位を嵩にしたヤツにキミを渡す事などできない…お願いだ。シェラ、俺の手を取ってくれ。』

……………

……………………

内容に目を通したエステルはおもむろに赤ペンを取り出し本に滑らせた。

「エステル何し…あぁーっ!」

アサヒが信じられないとばかりに大声をあげた。

「しかもボールペン…」

愕然したアサヒの声

「大丈夫。こっちの方が面白いから。」

悪びれもせずに告げられた言葉にアサヒの目が鋭くなる。

「アサヒ、そんな事より日曜日の件…」

「忙しいから無理。本を大事にしない人間なんて嫌い!大ッ嫌い!落書きした上に何がこっちの方が面白い、よ。!」

アサヒの言葉にガタガタッと図書室の入口から音が上がった。

「…………何、してるの?あなたたち」

アサヒの声が鋭さを増す。

図書室の外では抱えていた本に消しゴムを走らせる生徒の姿があった。

「………いや、その〜」

アベルが視線をさまよわせるが開かれた本の登場人物がやはり『アサヒ』や『アベル』に書き換えられている。

気まずそうな顔をしたアベルにカイン、ペテロやレオン…その他諸々の顔を睨みつけアサヒは鋭い声で叫ぶ。

「お前ら全員入室禁止だ―――――ッ!」




「…アサヒ、彼等は何をしている?」

鞄を握りしめ、アサヒを迎えにきたトレスは図書室の外で本を握りしめ落ち込んでいる一同を見つめ呟いた。

「本に落書きしたから入室禁止にしたの。本を大切にするトレス君には関係ないわ」

にこやかな笑みを浮かべたアサヒにトレスは落ちていた本を開いて見せる。

「落書きとはこれか?」

書き換えられた名前

「そう。」

「無駄な労力だ。」

グサリと一同の心に冷たい言葉が突き刺さる。

「…だが、気持ちはわかる。」

「…………あたしにはわからないけど。」

アサヒの言葉にトレスはパタンと本を閉じ答えた。

「つまりアサヒが好きだと言う事だ。」

「すっ―…、」

アサヒの顔が赤く染まる。

「俺はアサヒが好きだ。だから、アサヒが嫌な事はしない。」

「…………。」

真っ赤な顔のアサヒと表情一つ変えないトレス。

「恥ずかしくないの?」

「何故だ?俺は思った事を口にしているだけだ。」

トレスは静かに答えると開いた左手を差し出す。

「アサヒ、帰ろう。」

「…………うん。」

赤く赤く染まった顔、アサヒを誰にも渡したくないと強く握りしめた手で伝えれば…躊躇うようにアサヒも強く握り返す。

触れ合った指先は言葉以上におしゃべりで…この時間が幸せだとキミに伝える。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

アンケート1位おめでとう夢
希望にあった学園モノ。

アサヒさんお付き合いありがとうございました。


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