[通常モード] [URL送信]

夢小説(トリブラ)
シンデレラ(学園モノ ギャグ?)

※キャラ崩壊、百合表現あり。観覧注意




夏の暑い日差しも終わりをつげ、訪れたのは涼しげな風の吹く秋

この時期、聖トリニティブラッド学園では文化祭の準備で忙しくなる。

夜遅くまでつく電気は、学生達がいかに文化祭を心待ちにしているのか表しているようだ。

そんなある日のこと…数多ある部活動の中で色々と有名な部長ばかり集められた一室で事は起こった。

「演劇、ですか?」

エステルは、黒板の前に立つ女子生徒の言葉を繰り返した。

「そう、毎年…広報部では文化祭で写真の販売(被写体許可ナシ)をしてたんだけど生徒会長からストップがかかったんだよね。しかし、文化祭の売上がないと活動資金が心もとない。そこでキミ達に協力してもらおうと思ったのさ。」

爽やかな笑顔で告げられた言葉に一同は複雑な顔をする。

当然だろう。彼らは、広報部ではないし…本音を言えば広報部がどうなろうと知った事ではない。

「某は、辞退させて頂く。」

「俺もだ。」

ペテロの言葉に従うように続々と席を立つ一同をセスは見つめた。

「したくないなら別に良いよ。ボクとアサヒ、2人だけでするから。」

アサヒ

セスの口からこぼれた名前に一同の足が止まる。

「アサヒに相談したら快く引き受けてくれたんだよね〜…。」

明後日の方向を向きながら白々しくセスは呟く。

「…あれ?辞退するんじゃなかったの?」

席についた一同を見やりセスは、にたりと笑った。

「可愛い妹のお願いですからね♪」

アベルの明るい声が教室に響き渡った。

それに答えるように教室のドアが開く。

「セス、遅くなってごめんね。持ってきたよ。」

本を片手にやってきたアサヒにエステルが愛らしい微笑を浮かべる。

「アサヒっ!劇、一緒に頑張りましょうね☆」

エステルの発言に出遅れたものが舌打ちをもらす。

「うん、頑張ろうね。エステル」

ふわりとした微笑を浮かべたアサヒ。

頑張ろうね、エステル

エステル…

アサヒさんが、あたしだけに笑顔をっ!


ポタ、ポタ…

「え、エステルっ鼻血、鼻血出てるよ!」

「うふふふふ、大丈夫です。大丈夫」

心配そうなアサヒに白いハンカチを真っ赤に染めながらエステルは笑う。

ホラーだ。


「コホン、時間もないからさっさと決めちゃおう。劇は、ベターにシンデレラをやろうと思うんだ。で役についてなんだけど…公平にくじ引きで。最初にアサヒ引いて。」

「ん、わかった。」

セスの用意した箱にアサヒは手を入れ一枚の紙を取る。

「…王子?」

紙にかかれた文字を読んだアサヒに男子の顔が引きつった。

アサヒが王子役という事は、シンデレラと書かれた紙を引かなければならない。

って事は…女装?

男連中がだらだらと冷や汗をかく中、エステルは嬉々とした表情を浮かべた。

「次、誰が引く?」

カサカサと箱を揺らしたセスにエステルが主張しようとした時、誰かがその箱に手を突っ込み引き抜く。

「シンデレラだ。」

ビッと真っ白な紙に書かれた文字を見せつけた生徒に一同が固まる。

「トレス君がシンデレラか〜…頑張ろうね。」

「肯定(ポジティヴ)」

アサヒとトレスの間にほんわかとした空気が流れ、くじを引いていない一同のテンションが一気に落ちる。
メインは決まってしまったし、ストーリー上、アサヒと触れ合う機会などない。

そんな一同の心を読んだかのようにセスは、こんな言葉を口にした。

「…まぁ、トレスはアドリブきかないし…トラブルが起きたら対処できないだろうね。」

それはつまり、

トラブル起こして

王子様ゲットしちゃいなよ!

って事?!

視線だけでそんな意思疎通をした後、エステルは箱に手を伸ばす。

女性役なら誰でもいい…。

意地悪な姉ならトレスをいびれるし、魔法使いならシンデレラの代わりにお城に行ってあげるわ!

あぁ、神様ッ!

紙を選び開いた途端、エステルがガクリと崩れ落ちる。

彼女の手から落ちた紙をセスは拾い上げ笑った。

「エステルは大臣だね。」

その言葉にアサヒは、微笑む。

「じゃあ、王子様組だ。」

「はいっ!アサヒ王子。地獄の底までお供します!」

エステルの過剰反応にもアサヒはニコニコと笑う。

「ほら、みんなも引いて」

セスはそんなアサヒたちを見ながら箱を揺らした。

「俺が引こう…ん?」
「ユーグさん、何役ですか?は…??当たり?」

「あぁ、それは当たり。」

セスは微笑む。
「当たりとは…?」

「役なし」

セスの発言にユーグは教室の隅で『の』の字を書き始めた。

「気を取り直して、はいっ引いて」








「ほとんど練習できないまま、文化祭当日になってしまいましたわね…」

ポツリとケイトが呟く。

「時間もなかったし、仕方ないですわ。ケイト先輩」

「エステルさん…あなた、あれだけ練習の邪魔をしてよくもまぁ…そんな言葉を。」

ヒクヒクと口の端を痙攣させながら、必死にケイトは笑顔をつくる。

「邪魔だなんて…あたし、一生懸命頑張ったんです。」

「あら、そうでしたの。あなたがトレス目掛けて脚立を倒したり金槌を投げたり、アサヒとの練習中に乱闘騒ぎを起こしたのは…全て努力の結果なのかしら?」

「勿論です。」

ぐっと拳を握りしめたエステルをケイトは殴り倒したい衝動にかられた。

いや、むしろケイトを呼ぶアサヒの声がなければ床に沈めていたかも知れない。

「ケイト先輩ぃ〜…引っかかってしまいました。外して下さい。」

情けない声と顔でもう一度ケイトの名を呼ぶアサヒは、黒髪を袖口のボタンで繋いでいる。
「あらあら、アサヒ。どうやったらそんな事態に?」

微笑ましそうにアサヒを見つめ、ケイトは細い指先を伸ばす。

優しく絡まった髪をとけば、アサヒはニコニコと微笑んだ。

「ありがとうございます。」

「どういたしまして、アサヒ…王子の衣装とてもよく似合ってますわ」

「本当ですか?!」

「本当・「いや〜っ!アサヒ、可愛い!!」

ガバッとアサヒに抱きつきエステルは歓喜の声をあげた。

邪魔されたケイトの顔は穏やかだが目が笑っていない。

「アサヒ、写真取りましょう。写真ッ!はい、チーズ」

本人の許可もとらずにエステルは、パチリと携帯のカメラでアサヒの姿を収める。

携帯に保存された写真は、少しすましたようなアサヒが写っている。

ウットリとその写真を見つめるエステルの手から携帯を奪いケイトはそのデータを自分の携帯に送ってから消す。

「ああ〜っ!あたしのアサヒがぁ!」

「これでおあいこですわね」

ケイトはにこやかに笑った。

そんな馬鹿騒ぎをしているうちに時刻は進み、幕が上がる。

ステージでは、シンデレラ役のトレスに意地悪な姉1ペテロと意地悪な姉2マタイがあれやこれやと用件を言いつけていた。

役を代われとマタイが主張した気がするがおそらく気のせいだろう。台本には書いてないし…。

時が進につれ出番も近づく。

「うぅ…緊張、してきた…」

青い顔で呟いたアサヒを見て淡い色のドレスを纏ったモニカは笑う。

「真っ青な顔してどうしたんだい。心配する事はないさね。」

「モニカ…」

「ほら、ゆっくり呼吸して…」

すー…はー…

深呼吸を繰り返すアサヒの体を抱きしめモニカは続けた。

「力…ぬいて…。」

そっと耳元でぞくりとするようなハスキーな声が響く。

「あ…」

「いい子だ。そのまま、じっとしてな。」

ピクリと微かに反応したアサヒの耳元に唇をよせたモニカの後頭部に固いモノが命中する。

「――――ッ!」

後頭部を抑え呻いたモニカに野球ボールを投げつけたドウオが平坦な声を出した。

「モニカ、もうじき出番だ。準備しろ。」

スーツ姿のドウオは、モニカと同じパーティー来場者の役割だ。

「アサヒ、すでに魔女は登場している。準備しろ」

見ればステージでは、妙に貧乏くさい魔女アベルがトレスにカボチャやネズミを用意させていた。



「あ〜…なんかテンションがあがりません。何か甘いモノでもご馳走していただけませんか?」

目の前に揃ったカボチャ等を見ながらアベルはそんな言葉を口にする。

台本にはないセリフにトレスの顔に動揺の色が浮かんだ。

「発言意図が不明だ。早く俺…私をお城へ行かせて欲しい。」

「ですから血糖値が足りないんですよ。何でも良いんで甘いモノ用意してくれませんか?」

「……………。」

「用意できないなら仕方ないですね。今回は魔法をかけてあげれません。」

「…………それでは、俺は城に行けない。」

「そうですねぇ。パーティーは、諦めて下さい。」

笑顔で告げた魔女にトレスはため息をつき、一度ステージから姿を消す。

暗幕の隅で視線をさまよわせたトレスにウィリアム先生が近づき飴玉を握らせた。

「トレス君、これを使いたまえ。」

その目が輝いている事から普通の品ではないだろう。

ステージに戻るなりトレスは魔女の前に飴玉を差し出す。

「…え、なんですか?飴玉?…ダメですよ。もっと…」

「これは劇が始まる前、アサヒが俺にくれたものだ。」

その一言で飴玉の値打ちが一気にあがる。

「ください。」

「ならばさっさと魔法をかけろ」



観客の間から

「シンデレラってこんな話だっけ?」という小さな疑問の声が上がった。


ステージでは、魔法をかけてもらったトレスが、貰った飴に頬擦りをするアベルへ冷めた視線を送っている。

「ナイトロード」

「何ですか?あ、この飴は返しませんよ。」

「否定、先ほどの発言は嘘だ。それは、教授が用意したものだ。口にしない事を推奨する。」

トレスの発言にアベルが情けない悲鳴をあげた。



場面は変わり、煌びやかな衣装を纏った人々が姿を表す。

「如何ですか、王子。どなたか気になる女性は?」

エステルの問いにアサヒはムスリとした顔で首を振る。

「やはり、王子にはあたしが相応しいと思います。さあ、王子!あちらにウエディングドレスを用意しておりますので、是非!」

大臣の発言にアドリブに弱いアサヒが凍る。

「…ぼ、僕はっ…男だ…」

引きつった顔でそう告げればエステルは大袈裟な仕草で答える。

「愛に性別なんて関係ありません。さあ、いきましょう。あたしたちの未来に向かって!!」

ガッと王子の両手を握る大臣の手を誰かが打つ。

スパアァン!という良い音が響いた。

「抜け駆けは美しくないぞ。エステル」

ニヤリと笑った人物は、本来セリフがないハズだ。

「王子は、このアスタローシェ・アスランが頂く!」

エステルの手を打った扇を開きアストは不敵な微笑を浮かべた。

「…あたしもこのボンクラより王子の方がいいねェ」

「…ボンクラとは俺の事か?」

「あんた以外にいると思うかい?デクノボウ」

モニカの失礼極まりない発言にドウオは吐き捨てるように答える。

「好き好んで組んでいるワケではない。俺もアサヒの相手がしたかった。」

こうなると、元々役割に不満を持つ人間ばかり集まっているのだ。

観客のまえで、「俺だってアサヒと…」なんて事を言い始める。

話題の中心人物であるアサヒの顔は真っ青だ。

「さあ、王子!誰を選ぶんですか?!」

エステルの言葉にアサヒはうろたえながら言葉を探す。

舞台の隅では、完全に出るタイミングを失ったトレスがこちらを見つめていた。

誰かが、誰かがストーリーを戻さなくてはいけない。

しかし悲しいかな、誰も台本なんて守ってない。

アサヒは、ゆっくりと深呼吸をしてから鋭い声で答える。

「…あぁ、もうウンザリだ。誰も僕の事なんて考えもしない。皆、僕の身分が愛しいのだろう?!誰も僕個人など愛してはくれないのだ!」

「それは違います。王子!例えあなたが馬番でもあたしは、あなたを愛してます!」

「言い訳などたくさんだ。下がれ、貴様等の顔など見たくもない!」

エステルの赤面ものの発言に顔を赤らめたままアサヒは怒鳴った。

「怒ってるアサヒも素敵☆」

無理だ。
あたしには、無理だ。どう足掻いてもこのまま変な方向に進んでしまう。
そもそもシンデレラと出会ってすらいないのに…。

あ、そうか。トレス君が出てくれば良いんだ。


アサヒはぐるっとステージを見渡してから叫んだ。

「なんと美しい…、どうか僕と踊ってくれませんか?レディ」

そう言うなり、隅にいたトレスの手を引く。

台本と違う展開にトレスの顔には動揺の色が浮かんでいる。

ダンスの練習一回もしていないけど、大丈夫かな…

アサヒの頭にそんな不安がよぎる。

その瞬間に甲高い鐘の音が12時を告げる。

シンデレラお城にいた時間、わずか1分

「あぁ〜っせめて、せめて名前を〜っ!」

颯爽とステージから姿を消すシンデレラに王子は叫び…気づいたように落ちたガラスの靴を拾う。

「大臣、この靴の持ち主を探すのだ。彼女こそ僕の花嫁に相応しい!」

「一目惚れなんかで花嫁を決めては失敗します!絶対にダメです!!」

エステルのとんでも無い発言に観客の間から笑い声が零れる。

おそらくアドリブではなく演技だと思われているのだろう。

「…大臣、頼む」

「いいえ、いくら王子の願いでも聞き入れられません。」

ぴしゃりと切り捨てたエステルにセリフのないハズの来場者たちが口々に賛同の声をあげた。

「わかった…僕は、僕の力で彼女を探す。」

ガラスの靴を握りしめたアサヒの言葉に一同の視線がエステルに向く。

「わかりました。王子がそこまで仰るのであれば仕方ありません。王子の為に靴の持ち主を探しましょう。」

「ありがとう。」

心底安堵した声で呟くアサヒの手から靴を受け取りエステルは…

「おおっと、手が滑ったァ!」

そんな掛け声とともにガラスの靴をを床に叩きつける。

どう控えめにみても故意である事は明らかだ。

「……………」

唖然としたまま破片と化した靴をアサヒは見つめる。

その姿に良心が締め付けられる気持ちになりながら一同は、エステルに向かって親指を立ててウインクと笑顔を送る。

『グッジョブ!』

そんな心の声が観客席まで響いた気がした。


「…唯一の…手がかりが…」

「お困りかね?」

がっくりとうなだれたアサヒの耳にそんな優しげな声が響く。

「ウィリアム先生…」

アサヒは男の名をまるで不思議なモノでも見たような口調で呼ぶ。

無理もない。

彼は劇に登場するハズのない人物だ。


「ふむ。唯一の手がかりが砕けてしまったようだね。しかし問題ない。この僕の発明、高性能 人物探索システム『名探偵』にかかればどんな人物でも探し出す事ができるよ!」

「はぁ…」

アサヒの口からは、間の抜けた声が零れる。

「アサヒ君、まず捜したい人物の名前、生年月日を入力してくれたまえ!」

「使えねェ!!」

そんな叫びをあげながら、アサヒは名探偵を蹴り飛ばした。

その細い体のどこにそんな力があるのか疑いたくなるほどの鋭い蹴りは、軽々と機械をふき飛ばし壁に激突させる。


ドガシャンっ!
というけたたましい音にウィリアムは悲鳴をあげた。

「ジーザス!僕の名探偵がっ!!何をするんだねッ!アサヒ君!」

半泣きで訴えるウィリアムにアサヒは鋭い視線を向ける。

「使えねぇ発明ばっかしてんじゃねぇよ…」

「む、アサヒ君。かなり不機嫌だね。」

「…おい、テメェらボサッとしてねぇで、さっさととあの女俺の前に連れてこい!」

完全に悪者のセリフである。

怯えてしまった観客席…

同じく凍りついたステージ

そんな中、セスは呑気に呟いた。

「そういえばアサヒって中学時代喧嘩強くて四天王とか呼ばれてたっけ…」



「つ、連れてきました。」

怯えた声は誰のモノだったのだろう。

「…アサヒ」

恐る恐る呼ばれた名前に深いため息。

あぁ…やってしまった。

そんな反省をしながらトレスと向き合う。

今更のように白々しい微笑で愛の告白。

ナレーションの締めの言葉が妙に耳障りだった。




舞台も終わり片付けをしていれば

「…アサヒ、その…ごめんね。」

ポツリと呟かれた言葉

振り返ればエステルたちがしゅんとした表情で立っていた。

「…此方こそ、ゴメンナサイ」

ぺこりと頭を下げれば、どこかほっとしたような安堵のため息。

そしてどちらともなく笑い声がこぼれた。

出来は最悪だったけど、楽しかった…かな。

そんな言葉が浮かんだ。

「みんな、協力ありがとう。助かったよ〜っ!おかげでかなりの売上がっ!これで活動資金もバッチリさ☆」

ほんわかムードの一同の前でホクホクとセスが呟いた。

「アサヒ、次は何を演じようか?かぐや姫?白雪姫??」

配役をめぐり揉め始めるのは、また別のお話




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
強制終了

アンケートで頂いた学園モノギャグ夢

色々と突っ込み所満載ですが、ご容赦を(汗)

アサヒさん、お付き合いありがとうございました。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!