俺様何様貴様様
7
「あ、サユ。何々、どーした、俺に会いにきたかー!」
それは、間違っていない。
ラキアに行って来いよー、と途中まで引きずられて押し出されたのだ。
ここまで来たら、と思いなんでここにいるのという視線ときゃあきゃあ騒がれるのをうっとおしいと思いながら向かっていたら、このメンバー。
くるっと踵を返す。
「…………」
「ちょ、なんで見なかったふりで戻って行くんだよ」
「いや、その、メンバー的に……」
逃がさない、とダッシュで追いつき紗揺の腕を掴んで、白雪はにーっこりと笑顔を浮かべる。
紗揺は曖昧に笑って、言葉を濁す。
そこに混ざれという話になったら嫌だと思って、という言葉を。
「や、混ざろう」
「遠慮したい」
「僕はいいよ、別に君が来ても」
鴇が言う。
言って、向ける笑顔は色々と含みを持たせていた。
「いいって、行こう、サユ」
「……」
いやだなぁ、と思いながらも、行こうといわれて、来ないと君の負けだよというような視線を投げつけられて。
行かなければ、男じゃないだろう。
「わかった」
溜息ひとつ落しながら、紗揺は肩の力を抜く。
「最初からそう言ってれば良かったんだ」
「……お前は……それより、早くここから離れた方がいい」
へ、と白雪がまぬけな声をあげる。
あたりをみれば、視線は集中。
白雪は紗揺の腕をがしっと掴んだままだった。
そして、豪華メンバー。
ひそひそと声は響き、視線は羨望混ざるものだ。
その中には、白雪への嫉みも混ざり始める。
「確かに、それは花が正しいね」
にっこりと、周囲に笑顔を振り向いて、鴇は歩み始める。
早く通り抜けてしまおうと。
「行くよ、みんな騒がせてごめんね」
「ごめんなさい」
鴇に続いて壱もにっこりと。
威力は、絶大だ。
周りは黙ってそれに見惚れる。
「女王様だ!! 前から思ってたけど女王様だ、やっぱり女王様だ!」
「シロ」
「あ、ごめ」
思ったことを口に出しただけ、でも気に入らなかったらしい。
冷たい視線を壱は白雪に向ける。
「おい」
「ん?」
「手」
「あ」
言われて、離す。
その瞬間が少し、さびしい。
ずっと掴んでてもいいのに、とも思うけれども、そうもいかない。
「白雪ー、はーやーくっ!」
「おー!」
泰正に呼ばれて、サユも早く早くと言いながらついて行く。
「……これは遠足か」
小学生並のはしゃぎっぷりは、後から見ていればよくわかる。
はしゃいで、冷めて、それぞれの性格が出ているなと思いながら。
「でも、本当に、あんまり行きたくねぇなぁ……」
ぼそりと紗揺が呟いた言葉は誰の耳にも届かない。
本当に、行きたくないらしい。
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