俺様何様貴様様
6
その視線を慶鷹は無視する。
無視したのだが、こことの仲は見透かされている。
気になって気になって、たまらない。
「今でも結構、誰とでもできるかも」
「変わってないってこと?」
「うん、でも時と場合は一応、ほら一応」
「それはしっかり守ってね」
任せてください、と笑いながら敬礼。
「でも、ほどほどにね。やっかみうけちゃうよ」
「そうかー?」
「うん」
「あのー」
と、控え目な声が聞こえる。
その声の方をみると、教壇で先生が困っていた。
「授業……」
「あ、すみません」
「すみませーん」
「わかればそれで……」
そうして聞こえ始める授業の声は、子守唄と同じ。
間もなくして、すやすやと眠る吐息が聞こえ始める。
寝ッぱなしで、大丈夫なのかなぁと壱は後の気配を感じながら思う。
でも起こすのもかわいそうだ。
結論は放っておこう。
同じように、慶鷹も大丈夫なのだろうかと思っていた。
寝顔を見れるのは、なんとなく嬉しい。
だがこのままでいいのだろうかとも思う。
起きろと言った方が本人のあとあとのためにはいいのかもしれない。
けれども今寝ているあの幸せな顔を終わりにするのもなぁ、と真顔で一人、堂々めぐりをしていることなど誰も知らない。
そうして無駄に、時間は過ぎていくのだった。
そんなこんなでそれぞれ思いつつすっとばして放課後。
白雪のもとには、お迎がきたのだった。
「白雪、お茶しない? 慶鷹も武深君もきていいから」
「甘いもの……」
「あるよ」
にっこりと、鴇が甘いものをちらつかせれば、もう行く気は満々で。
「二人も、行くかー? 行くよなー!」
「……別に、お断りする理由はありません。行っていいのなら」
壱がにっこりと笑って、どうするのと慶鷹に視線できく。
鴇と壱と白雪。
この中にはいれば確実に自分が何らかの標的になるのは確実だ。
だが、それでも。
「……行く……」
一緒にいる時間が、少しでもほしい。
「白雪ー!! って、うわ、雪……!」
がらっと、扉を開けてやってきたのは泰正。
なんでそこにいるの、という状況に驚く。
そして噂は本当か、と実感。
「あ、泰正! 鴇さん、泰正もいい?」
「うん、構わないよ。彼がいいならね」
「泰正! 泰正も茶しに行こう!」
「え」
「鴇さんところで茶」
心臓飛び出るようなイベント、何用意してんだよこいつ。
そんなこと思いつつも、こんな珍しいことは早々ない。
ないから、頷いてしまう。
なんだか気まずいことになるかもしれないなぁとも、思いながら。
「人がいっぱいって、楽しいよなぁ」
「そう?」
「うん、賑やかなのは好きだ」
と言って、教室をでればそこに、またしても知った顔。
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