俺様何様貴様様
3
「くそっ……」
悪態ついても、赤い顔は変わらない。
「慶鷹ってば、いつもそうだったらいいのに」
「五月蠅い」
「嬉しいんでしょ? 僕に感謝してね、本当は僕がしたいくらいなのに」
さらりといたって普通に紡がれた言葉。
けれども、周りはその言葉に耳をそばだてる。
「鴇さん、そんな冗談」
「冗談じゃないよ。君がいいなら今したいよ」
その言葉にチャイムがかかる。
「……えーと?」
「相楽鴇は、白峰白雪が好きだよ」
「マジで」
「うん」
恋愛感情で好きだよ、と付け加える。
ならさっき、背中を押したのは何でだと思う。
「と、ここで言う話じゃなかったね、注目の的になっちゃったよ」
「鴇ー、全部わかってやってるでしょー」
ラキアの言葉ににっこり。
肯定だ。
「あのー、授業はじめたいんですが……」
「えー授業なんて」
「俺は授業に戻りたい」
「皆でサボろー。淳も来ないと僕が寂しいから一緒」
生徒会長自らおサボリ宣言。
はいはい、と慶鷹も、白雪も壱も引っ張られる。
「センセー、三人借りてきますねー、生徒会の仕事で」
堂々とサボろうって言ったのをしっかり聞いていたけれども、先生は何も言わない。
はぁ、と曖昧な返事を返しただけだった。
ということで場所は変わって生徒会室。
どういう話をすればいいのか、というのはそれぞれよくわかっていない。
ただあの場にそのままいるわけにはいかないと思ってラキアは連れてきたのだった。
話をうやむやにするには、聞いているものが多過ぎた。
「で、鴇は本気?」
「本気だよ、もちろん」
「で、白雪は」
「ごめんなさい?」
ぺこっと頭を下げて断る。
そして、鴇さんにはそういう感情は多分持てないと告げる。
でも、それもわかっていたと鴇は言う。
「そのうち好きになってくれればそれでいいよ」
「や、好きは好きなんだけど意味が違うから……」
「そう、でも好きになってね」
言う通りになると思っているものの言葉だ。
「鴇と白雪は現状維持みたいな感じー? そんで比嘉君は?」
「何で、俺も……」
「あんな顔真っ赤にしたら、好きなんだって誰でも思うよ。だって君、今までキス以上しても真顔だったはずだよね」
慶鷹は答えない。
「本当に好きな子にはこういう反応するんだよ、慶鷹は」
「鴇っ!」
「ムキになるってことは、真実でしょう」
視線は慶鷹に向けられる。
じーっと、集中。
「慶、俺のこと、好き……?」
「嫌いじゃない」
「聞いてるのは好きかどうかで嫌いじゃないかどうかじゃねーよ」
「…………好き、だと思う」
ぼそっと小さく、聞こえないほどの言葉。
その言葉への答えはまたきっぱりと。
「俺、友達としての気持ちしかないから、うん」
「白雪きっついなー」
「んー、でも反対にこれ優しさー」
ずるずる引きずるよりも早く諦めろということ。
もしくは。
「あとは、好きでもいいんだけど、俺に無理やり気持ちもってこなきゃいーよ、それで。鴇さんも」
想うことは自由、でも押し付けられるのはいやだ。
そう言って、笑う。
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