俺様何様貴様様
2
「うぉっ、本当に視線すごい」
「どうするのか、気になってるんだよ」
ひそひそ話声。
十分に聞こえてくる。
どうするんだと向けられる視線は、興味の色を持っている。
「おはよー」
歩んでいく中で声をかけられる。
そうすると、一層ざわつく周囲と集まる視線。
「昨日の今日で、センパイおはよーざいます」
「おはようございます」
「部屋にいたらー姿見えて追いかけてきたー。あ、武深も大変だよねー本当。紗揺様の突然だしー」
「そうですね」
やってきたのは、颯だった。
彼にむかって黄色い声色でおはようございます、の声。
それに笑顔で振り返される手。
「ありゃ、センパイもしかして人気者?」
「うん、去年のいい男、上位」
「何ソレ」
「学園祭」
「あー」
「ちなみに武深はー」
「いい女一位でしたが、何か」
壱はにっこりと笑う。
「え、あ、なんかいい男いい女とか言ってたような気がするけど。え、出場者全員男? 男?」
「うん」
こくこくと頷かれる。
「いっちゃん、がんばれ今年も一位! いい男一位はー?」
「もう卒業された方でー、今大学部にいる方だよー」
「へー」
「一票差の勝利だったけどね、紫藤様と」
「サユと!?」
びっくりして、声は少し大きくなる。
そして、颯も驚く。
「サユって、呼んでるの?」
「呼んでます」
「……じゃあ俺のことも先輩やめて、颯って呼んで」
「ん、颯。俺のこと白雪な」
「……なんかくすぐったくていい響きだなぁ」
颯はにこにこと、笑う。
名前を呼ばれたくらいでそんなにうれしいのかと、白雪は思う。
不思議だった。
そんな不思議を感じたのか、颯はふと、笑う。
「大体がね、様付なんだよ。同学年でも特別な面々にはねー。まー、本人がいやって言えば、つかないけど、めんどくて言わないから」
「じゃー、颯様?」
「うんうん。武深も、様付だよな」
「そうですね」
現一年で様がつくのは、比嘉慶鷹、九条恭衡、武深壱、そして現在留学中のもう一人だけだと、颯は教えてくれる。
「二年は俺と和泉ちゃんと、ゆんゆんとー……」
「へー」
「三年は、ラキさんは様付イヤって人だったから皆つけないけど、紗揺様と相楽様と、椎名様かなぁ」
「いっぱいいてよくわかんない」
「だとおもうー」
まだ、この澄縁学園の上下感覚はよくわからない。
でも宮様なるものが偉いのはわかった。
そして、憧れられる理由も、本人たちをみてわかる。
「あれ、もしかして俺すごい人とばっか知り合いじゃね!?」
「そうだね」
「あははー気がつくの遅いー」
他にも話をして、学校へつく。
颯は二年、教室のある会が違う。
階段で分かれて、壱と白雪は教室に向かう。
その途中で。
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