俺様何様貴様様 3 ハゲると言われて、白雪は一生懸命頷く。 それは、それはヤダと。 「シャンプー使うんだよ、めんどくさいから石鹸でとかしないこと」 「了解!」 「本当にわかってるのかちょっと心配だけどね」 「や、ハゲんのは本当嫌だし。てか学園祭の話もっとききたいっす」 「そっか、転入生だよねー、澄縁の学園祭は三日間で、こう、わーって感じで、まぁ、大騒ぎだよ」 颯と和泉によると、学園祭は中学、高校の垣根がなくなるらしい。 合同というわけではないが、どちらの学園祭にもいける。 「あ、てことは中学の方にもいけるってことかー」 「中学の方からこっちに流れ込むのが毎年の隠岐まりだけどねー。卒業した先輩を見にー」 「へー」 「中学には宮様の存在はないけど、まぁ、そこで人気がある人がだいたいなってるから」 「へーへー。そういやラキさんの弟っているんだよな、中学」 「いるねー」 「うん、アキちゃん」 苦笑しながら、和泉と颯は視線を合わせる。 それが意味することは何なのか、白雪はわからない。 「顔一緒だけど全然違う感じだった、写メ見せてもらったから」 「弟さんも向こうで祭り上げられてるからね、本人とっても嫌そうだけど」 「え、先輩知り合い?」 「それなりにね。会長が僕の弟ー! って一時期しつこく、しつこく……」 「うん、しつこかった、ウザかった」 想像できて、おかしい。 嫌々つれ回される弟、ご機嫌の兄、その被害にあう周囲。 「俺もねーさまがいるんですけどねー、似てないけど。やっぱ兄弟ってみせびらかしたいもんなんですよ。俺ねーさま、見せびらかしたいし」 「へー、ねーさまって呼ぶんだー」 「私の方が偉いんだから様付けなさいって。もう体に染み染み」 白雪は笑って携帯をとりだす。 そしてこの人この人、と二人に見せる写真。 「似てるけど似てないなー。美人さんだー」 「目もとは似てるね」 「自慢のねーさまです」 へへっと嬉しそうな表情。 本当に幸せな家族の中で育ったんだなと二人に思わせる。 帰ってきた携帯をみて、また笑う。 「あとでメールしとこう。てか、もう結構遅い時間じゃないすか。俺帰ります。ってか茶菓子!」 「あ、そういえば……持って帰るといいよ」 和泉は立ち上がって、冷蔵庫をごそごそ。 そこから出てきたのは箱だった。 「結婚式の引き出物くさい」 「そのとおり、先週いってきて、賞味期限明後日までなんだけど僕、食べれないから」 「俺なら余裕で!!」 わーい、と受け取ったのはおなじみのバームクーヘンだ。 明日食べようと大事に抱える。 「じゃ、先輩たちおやすみなさい!」 「おやすみー」 「おやすみなさい、扉は静かにしめてね」 「うーっす」 言われた通り、静かに閉める。 部屋に残った二人は、ふっと視線を合わせた。 「手ぇだすの?」 「さぁ?」 「俺、出しちゃうかも」 もちろん本人は、そんなこと全く知らず、バームクーヘン抱えてご機嫌で部屋へ戻っていた。 [前へ] [戻る] |