俺様何様貴様様
4
チーンと音。
九階まで誰も乗ってくることない。
がーっとドアが開いて、引きずるように降りる。
「サユ、もうちょっとだから、あと部屋のカギ」
「……制服の中」
「おま、それを俺に出せというのか!」
だって、眠い。
それは理由にならないと白雪は言う。
「……手伝う……?」
と、後から控え目にかかった声に白雪は首だけ回す。
天からの、助け!!
みるとそこには、きらきらと輝く効果が飛びまわる美形さん。
マロン色の髪に薄い茶の瞳の、ジャージ姿の王子様。
身長は、白雪よりも高い。
紗揺を支えているのもあって背中は丸くなっているが、それでも見上げる高さはある。白雪よりも身長は高い。
「お、お願いしますっ!!」
もう誰だって構わない。
とにかく助けてくださいと白雪は必死。
「紗揺様、しっかり起きてください」
「サユー」
「ねみゅ……」
「…………」
「…………」
舌足らずな言葉は、意識がほとんどぶっとんでるからということにした。
二人で支えて、紗揺の部屋までたどり着く。
「カギ、カギ!」
「こっちのポケットにはないよ、そっちは?」
「え、ない。ちょっとマジどこよサユ!」
「あった、内ポケット」
静かに物事に対処してくれるその人が見つけたカギ。
部屋の鍵をあけて、扉を開ける。
マンションの一室、普通の部屋より少し広いくらいの部屋。
「相変わらず、物がない部屋だなぁ……」
「お邪魔します」
靴脱いで、脱がして、そのまま寝室のベッドに半ば放り出すようにする。
その心地よい場所に、もうすでに紗揺は本格的に寝始めたのか、反応がない。
「サユめ、この礼は羊羹10本にしてやろう」
「紗揺様の寝姿……写真とったらいくらで売れるかな」
「え?」
「なんでもありません」
にっこりと笑顔が返ってくる。
白雪は、ありがとうございました、と助けてくれた人に礼を言った。
「どういたしまして、1年の白峰白雪君」
「あ、なんで知ってんですか」
「有名だからね、転入生」
俺有名だなんて初めて知ったんですが、と言葉が返る。
それに、ふっと笑い。
「転入生ってだけで、有名だよ。付け加えて、宮様ズと仲がいいから……生徒会室にもくるよね、あのアホと茶のみ」
「ああ、行きます」
「僕たち、その時にあってるよ」
「え」
すみません、わかりません。
あなたはどなた様でしょう。
面と向かっては言えないけれども、そんな表情。
「生徒会会計、2年の加藤和泉。名のってはなかったかなぁ」
「…………あ」
「思い出した?」
「いつも仕事てきぱきしてる人」
「アホのせいでね、僕の仕事の半分以上はアホのだからね、あのアホのな」
よっぽど仕事を押し付けられているのに腹が立つのか、和泉の表情は笑顔なのに重い。
この人鴇さんと同じ部類の人だ、と白雪は薄く笑った。
「アホの人は……」
「この九階、全員の部屋に蜜柑見せびらかしにきたよ」
「わー」
「本宮君が仕事しろって言ったら、しないかなぁ……今度そう言うように、言っといてくれないかな」
「あ、はい。そだ」
白雪は、手にしていた包みを開ける。
紗揺を抱えていても、無事を守り通した菓子。
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