俺様何様貴様様
4
「鴇さん、この前借りたもん返す」
思い出して、忘れないうちにと言うけども今は手がちょっとべたべた。
「……慶! 慶俺のカバンあけて!」
「この何も入ってなさそうなカバンをか」
「失礼な! からっぽじゃないし!!」
言われて慶鷹は白雪のカバンを開ける。
中にはCDと、投げ込まれたシャーペンとメモ用紙っぽいものだけ。
「授業中使ってたノートとかは、どこなんだお前」
「教室。それはいいからCD渡して。鴇さんありがと」
「どういたしまして」
鴇に返されるCDはクラシック。そんなもの聞くのか、と意外に思う。
「……慶、俺がそういうの聞いちゃ、不服か」
「いや、意外だと思って」
「だろうな。ちっちゃいときにおねーさまの影響もあってピアノやってたから、今でもそういう音は好き」
「ピアノ弾けるのか」
「多分まだ猫踏んじゃったくらいは……」
相当昔のことだ。
もうきっと忘れているはずだと白雪は笑う。
「あときらきら星くらいならいけるかな。でもチューリップは無理」
「チューリップの方が簡単じゃない?」
「あの間延びした感じが、苦手だから無理」
「慶鷹、ヴァイオリン弾けるんだよ」
「え、すげぇ! カッコイイ!」
鴇の言葉に食いつく。
きらきらと瞳輝かせて、興味津々。
「馬の尻尾で音出すんだろ」
「間違ってないが……弓といえ」
「僕はフルートが」
「おお、鴇さんのは聞いたことある。最初に会った時もなんかすげーいい音! って思って行ったんだ」
鴇と白雪の出会いは音楽室。
学園探検の中で、二人は出会った。
フルートの音に誘われて、聞こえてきた窓の下に座り込んで、いつの間にか昼寝をしていた白雪。
開け放たれた窓を鴇が締めようとした時に、白雪と出会った。
「涎垂らして寝てたね、とても気持ち良さそうだった」
「昼寝はどこでも気持ちいいよ」
ひと肌があるともっといいね、と笑う。
「微妙なぬるさが、とってもいい。他人でてったあとの布団とか俺大好き」
猫みたいに丸くなったらまた寝てしまうあの生ぬるさが大好き。
甘いものも好き。
知らないことがまだいっぱいあるだろう白雪。
「てか俺ばっかり話してる、ごめんな」
「ううん、楽しいからいいよ」
慶鷹も頷く。
そんなに面白いことは話してないけれども二人がいいなら、それでいい。
他にも色々と話していく。
「あ」
と、突然声をあげる。
どうしたのかと、思う。
「御便所」
呟いて、立ちあがる。
二人はいってらっしゃいという生ぬるい視線を、白雪の背に向けた。
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