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俺様何様貴様様
やってきました、学園に1
 ただいま、そしてこんにちは。
 二人は学園の門をくぐった。
 重い鉄柵の扉はおおいに開かれているのが常。
 ただ入ってすぐに守衛さんがいる小さな箱みたいな建物がある。
 淳はぺこりとそこに頭を下げた後きょろきょろする白雪を引っ張っていく。

「でけえっ!」
「迷子るなよ」

 淳の言葉にこくこくと白雪は頷く。

「こんな広いガッコ初めて。淳、よく通ったなここ」
「スポーツ推薦ありがとう!」

 じぃっと白雪は淳を見つめる。
 淳は髪を長くすることもなくこざっぱりしている。何、と笑えばやわらかい雰囲気になる。
 そしてスポーツ推薦ありがとうの言葉通りに、サッカー少年だ。
 バランスの良い体。

「淳ってばかっこいいのな」
「何マジに突然」

 突然変なことを言うのはいつものことだけれども、と思う。
 淳はお返しとばかりに白雪を見返す。
 淳の方が白雪よりも少し背が高い。

「結論、お前と見つめあってもなんもかわらない」
「無駄なことだったな」

 ふ、と視線を反らせ合いつつ笑いあう。
 こっちこっち、と淳に軽く説明を受けながら白雪は寮の方へ連れて行かれる。

「荷物置きに行くだろ、俺も置きたいから」
「おー。ぎゃああ、すげぇ噴水、噴水! しょぼいのじゃなくてどばーってすげぇ!」
「はいはいはい……」

 何を見てもすごい、とすごいすごいと叫び声。
 途中からは首根っこ捕まえて引きずるようになってくる。

「はい、ここが寮。山田さん呼んでくるから」
「下の名前は太郎とかですか」
「おしいけど違う、山田太一さん」
「郎じゃなくて一か、残念」

 山田さーん、と管理人室のをノックして開く。
 そこから顔を出したのは案外若いお兄さんだった。
 そして。

「な、なんか美しい人がでてきたんですがっ!」
「あー……言うの忘れてた、ここ美形多いから」
「本宮君、お帰りなさい。君が……転校生の」
「白峰白雪です。よろしくお願いします」

 ぺこっと頭を深く下げたと同時に、背中に背負っていたリュックがずり下がる。
 うわ、と声を漏らし、そのまま白雪は荷物を下ろした。

「はい、よろしくお願いします。部屋は二人部屋になるので……307号室です。同室の子がいるかな……ちょっと待っててください」
「はーい。淳部屋どこ」
「407号室。お前の一個上だな」
「わかった、天井つつく」
「やめて」

 白雪は淳から寮がどうなっているかを軽く聞く。
 一階は食堂と風呂と洗濯コーナーと生活に関するものが色々。
 二階には自習室とくつろぎの交流コーナー。
 そして三、四階は一年。五、六階が二年、七、八階が三年となっている。

「あれ、でもここ九階建てだろ」
「一番上は、生徒会ゾーン」
「はー、そうなんだ」

 現実感あんまりない。人ごとだというように白雪は言う。

「それよりここの飯うまい?」
「うまいうまい」

 ここにいる人たちよりも、食べる物のことのほうが大事。
 と、部屋にいるかどうか確認をとってきてくれた山田さんが帰ってくる。

「武深君いて、今からお迎えがきてくれるそうです」
「え、こいつの同室って」
「武深壱君です」

 その名前を聞いた途端に、わーと淳は棒読みで声を漏らす。

「がんばれ、超がんばれ白雪」
「え、何かまずい人?」
「まずくはない、けど……いや俺がまずい」

 何だそれ、という表情を浮かべて白雪は視線をあげる。
 するとちょうど正面の階段から降りてくる足が見えた。
 ゆるゆるとした足取り。だぼだぼのジャージはよれよれ。
 Tシャツは真っ白、眠そうにこする目。その目をこする指は綺麗だと思わせる。
 そしてその手が目から離れれば、その下にあるのは。

「でた美形」

 呟きが漏れる。
 瞳は切れ長で鼻梁はすっと通っていた。黒髪はぼさっとしてはねているのか寝癖なのかわからないけれどもそれは問題ではない。
 迷わず一直線にこちらへ近づいてくる。

「きた。本宮も山田さんも知ってるからこれ?」
「これ? お前人のことこれって何初対面だから、初対面ですから俺達」
「……俺よりちんまい」

 ちっちゃいといっても176センチある白雪は小さいわけではない。
 けれども相手はそれより10センチ以上高い。

「もっとちんまいかと思ってた」
「淳君、この人殴っていいかな、俺この人とこれからよろしくやってけるのかな」
「ダメ。それにこいつ、武深じゃないし、お前もあんまりからかうなよ」
「へーへー。壱に言われて迎えにきた。あいつ今手が離せないから。俺は湊総司」
「白峰、白雪。よろしく」
「女みたいな名前なのに、顔普通かー。もったいね」

 湊総司(みなと・そうじ)と名乗ったその人はつ、と長い指で少し目にかかるくらいの白雪の髪を払う。
 その下にある目はあんた何いってんの、とギラギラ鋭い。

「白峰君、これがカギです。なくさないようにしてくださいね」
「ありがとうございます」

 話の一区切り、とみられて差し出されるのはカードキー。

「あとの説明は俺やっとくんで」
「じゃあ……本宮君にお願いします」

 三人は管理人室を後に部屋へと向かう。

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あきゅろす。
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