俺様何様貴様様 2 「先輩ばっかり……!! しかも有名な人いっぱいいるしっ」 「いっちゃん、俺達一年だからね。部活に混ぜてもらった時に、こう……」 どうだというのだ。 しかも出てきた名前は、今白雪が懇意にしているものたちばかり。 あの急激な距離の詰め用の原因はこれか、と壱は納得した。 宮様ズを頂点とするこの学園のヒエラルキー。その上層の方々の名前ばかり。 どうして皆、白雪にと壱は思う。 「まー、みんなちゅーするともういいやーってなるんだ。ああ、なんかお前とはできね! みたいな感じで。俺もそっから先とか全然する気ないから抵抗するし。まぁ話せばわかってくれる人とだけ、今まで出会えてる幸運」 そこはわかってるんだ、と壱は思う。 白雪は運がいい。 この学園には、最後まで突っ走る輩もいる。しかも、そういうものに限って家柄が良かったりする。 だから、反抗できないことの方がおおい。 「……宮様たちとはしてないんだね」 「うん。だってラキさんは俺のこと淳相談場所だと思ってるし。鴇さんは君おもしろいね、子飼いにしていい? とかおっそろしーこと言うけどそんな気ないのわかる。サユは……サユはどうなんだろうなぁ」 「てことは一番危ないの紫藤様じゃないか」 「ん、何?」 「何でもない」 壱がぼそっとつぶやいた言葉は、白雪の耳には届かなかった。 「一番やってんのは泰正とかなー? あいつ会うたびにキスしようぜーだし」 「……あいつか……」 「まぁ、そのいい人ばっかだからね!」 「…………僕が言っても、多分向こうから来るだろうしね……」 溜息ひとつ、壱は落としていく。 「てか、いっちゃんと同室って時点で、俺有名人だよな」 「うん、まぁ、そうだね」 「あと転入生だし」 「うん」 「皆興味本位で見に来て、ちょっかいだして気がすんだんだよ。だからいっちゃんが心配するようなことはきっとないって! 俺とほんとーに仲良くなりたきゃ向こうから声掛けてくるし、俺やっぱりまだここのことよくわかんねーから自分からは、そんな会いに行こうとしないし」 にこにこと笑顔。 自分のラインはここ、と完全に決めてある。 それは明確で、自分を中心にちゃんとある。だから大丈夫かなと壱は感じて、これ以上言うのはやめようと思った。 「本当に困ったら、僕に相談しなよ」 「おー、ありがとっ!」 ああ、好きだなと思う。 何だか良くわからないけども、この勢い、雰囲気。 壱にはどこか新鮮なものだった。 「あ、そろそろ飯タイムじゃね? 食堂行こうぜ」 「そうだね、19時……込んでそうだけど」 そう言って二人はのろのろと食堂へ向かう。 噂になっているのを、知ってか知らずか。 [前へ][次へ] [戻る] |