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俺様何様貴様様
5
『淳、結婚しよう』


 何言ってるのこの人ー!!!!!
 思わず笑ってしまう。
 一瞬、何言ったのかとしんと静まった後にいやああ! だとか ぎゃー! とかきゃー! とかまたー!! そんな声が響く。
 名前を呼ばれた淳は、クラスメイトにばしばし叩かれながら硬直していた。
 即座に副会長が舞台に上がってきてこのアホ宮ぁ! と遠慮なくばしっと叩く。
 だって言いたかったから、とマイク近くでの言い争いは丸聞こえだった。


「やべっ! ウける、何もう最高! 淳にメールうってやろ」
「シロ、これある種何かあるたびの恒例行事だから」
「うっそ、こんな面白いこと何かあるたびやってんの!? ちょ、淳さんなんでそれを俺に早く言わないの!」


 ぶはっとさらに笑う笑う。


『えー、大変失礼致しました。いつものアホなんで生ぬるく流してください。あとでこってり絞っておきます。会長挨拶は以上です』


 マイクを奪って副会長が挨拶する。
 そしてそのまま、司会進行。


『では新学期始って、最初の宮様ズです』


 その言葉に、それぞれの宮様の名を呼び、叫び、ある種アイドルのコンサート会場に近いノリが生まれる。
 その勢いは、とどまることない。
 舞台の上に、二人また現れる。
 ふわりとした笑みを浮かべて手を振る人。栗毛はサラリと流れ、物腰も柔らかい。
 そしてもう一人、仏頂面で登場。ばさばさの黒髪を整えることなく、ズボンのポケットに手を突っこんだまま偉そうに。
 この二人が視線を合わせることはない。
 まず、ラキアがマイクを持つ。


『僕本気だからねマ……えーと、宮様として特に言うことはないんだけどー……皆仲良くね。陰湿なこと僕キライだから。あとは、今年卒業だし、そろそろ次の宮様考えてきます』


 途中まで先ほどの続きのテンションだったがじろりと後からの副会長の視線にだまる。
 そして言い切った言葉に、ざわと雰囲気が揺れた。


『ほい、鴇』
『ありがとう……皆、夏休みはどうだったかな? 僕は実家でのんびりすごしていました。一番長い学期だから思い出もたくさん作ってください。月が言うように、僕も卒業だから……僕の次の人はもう考えてあります。近々、その人を呼ぶと思いますから……なんにせよ今期もよろしく』


 にこり、と笑顔を浮かべる。
 そしてその笑顔を貼り付けたままで、鴇は紗揺にマイクを渡した。
 二人の視線が合うことはない。


『……一年にいる奴から』


 ざわめく。
 突然の言葉は何を意味するのか、なんとなく今までの流れで読める。


『次の花を決めた。あとで行く』


 一年の中に、次の宮様がいると、ざわめきは止まらない。
 二年の中からは、溜息も聞こえる。
 だがそれ以上に、誰だ、誰だ、もしかして自分かと期待も止まらない。


「いっちゃーん、誰だと思う?」
「さぁ? 僕あの人と接点ないからわかんないや。どうせ今日中には誰か、わかるよ」


 ざわざわの中で壱は苦笑する。
 きっとこの式が終わればそのまま、その人間のもとにやってくるだろうことはわかる。
 舞台の上でも、もう決めたのとラキアが紗揺に絡んでいた。
 やがて少し静かになって、式は終わる。
 式の後はクラスごとに混雑を避けるために退場。
 一年は、一番最後だ。
 一年だけになって、ざわっと前から空気が変わっていく。
 聞こえてくるいのは叫び声。
 確実に宮様がこちらへきているのだとわかる。


「誰かな」
「紫藤様でしょ」

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あきゅろす。
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