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俺様何様貴様様
4
「早く席につきなさーい。つかないと、お前ら、どうなるかわかってるよな」
 担任登場。花のような言葉のあとには男のオーラ。
 せんせーかっこいー、と微妙に声高いキャー、の声が響く。
 やばい、あのギャップウける、と白雪は机につっぷして笑う。男の微妙に黄色い声にも、慣れてしまってなんともない。


「ちょっとぉ! 何笑ってるの白峰ぇ!」
「や、いや……ちょっとぶはっ!」
「……白峰、あとでガタガタ言わせるから体育館裏」
「えーめんどいっすー、ここでいいですー。むしろ今言いますガタガタ」


 ついでに机もガタガタさせるんで、と白雪は付け足す。
 本当にガタガタしていると、隣の席からふっと笑いが漏れるのを聞いた。
 そしてつぶやきもはっきりと聞こえた。


 変な奴。


 変な奴ですが何か!
 その言葉は呑み込む。


「はい、その白峰は一応ここにたって自己紹介しなさぁい、あと3秒できなさい、いーち」
「そんな今更くさい」
「に」
「……いきますっ!」


 さん、を言い終わる前にガタンと立ち上がって前へ。
 改めて、皆の前にたてば変な緊張がやってくる。


「えーと、白峰白雪です。激しく今更なんスけど、よろしく、と……もう恥ずかしいから席帰ってもいいですかっ!」
「いいわよ」


 三ツ屋からOKがでればそそくさと退散。
 席についてまた突っ伏す。


「二学期も成績落とさないようにね。おとしたら先生、泣くから。私にも迷惑かかるからそこよろしくね。それさえまもれば授業サボろうが何しようが許すわ。ということで始業式に移動」


 時間もそろそろ、ゆるゆるざわざわと立ち上がる。
 始業式がある講堂までは歩いて五分かかる。
 他のクラスも移動を開始しているようだった。


「俺寝ると思う」
「寝れないよきっと」
「えー?」


 移動しながら、白雪が呟けばすぐに無理無理との声。
 何故なのか、と問えば答えは簡単。


「しょっちゅうキャーとかギャーとか兄貴ー! とか」
「わー、タノシミデスネ」


 棒読み。
 予想できた。
 新学期、生徒会挨拶があればアホ宮がでてくる。
 あの人本当アホなのに、なんで生徒会長できてるんだという質問を壱にしたことがあったが、人気とアホと回りができる人間だからかな、と返された。
 ラキアが何もできないわけでなく、むしろできるのだが、支える人間たちがそれ以上にてきぱきできる人間なのだ。


「ラキさんは会長だからでるけどあとの二人もでてくる?」
「でてくるよ、余興みたいなもので」
「へー」


 講堂の中はざわついていた。
 クラスごとに席が割り振られ、そこに着席。
 ざわつく中にもきゃー! や、宮様ー! という声が混ざっていた。


「人気者! 宮様って何、超特別だよなやっぱ! 本人たちおもしれーのに」


 と、静かにとの放送。始業式が始まる。
 校長の長い挨拶が終わり、会長が舞台に上がると共に、きゃー! と声があがる。
 だが彼が演台の前に立った瞬間にしん、と静かになる。
 言葉を待つように。


『皆久しぶり、夏休みはどーだったでしょーか。僕はだらだらしてました。まー皆も楽しかったってことにしとこう。新学期、僕が言うのは一つだけです』


 そこで言葉を切って、笑みを浮かべる。
 はう、とため息が漏れる。
 何人かぱたっと倒れたな、と白雪は思った。

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