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俺様何様貴様様
12
「一年七組、お化け喫茶にきてね、ゆき!」
「あとでいくよゆきちゃーん!」
「ありがとゆきー!」
「…………」

適応能力が高すぎる、と紗揺は無言で見守った。
距離をとって。

ノリノリじゃねぇか、誰だあれは。

それが紗揺が抱えた印象だった。
クラスのメンバーと手ふり愛想ふりまき。
少しイラっとする。

「きてねー! ゆきゆき!」

くるっと回ってみたり、きゃっきゃっと楽しげだ。

「やべー、なんかちょー楽しいんだけど」
「白峰! お前もてもてだなー」
「自分でもそう思う! 俺かわいいよな!」
「おー、かわいい、俺ちょっとときめいた」
「あははははっ! サユ、俺、かわいー?」
「ああ」
「! 何言ってるとか言われるかなと思ってたのに頷いた! ありがとな!」

にっこりと笑って。
うっかり頷いて、しまったと思ったのにこれだ。
この笑みだ。

「……やばいな」
「は?」
「なんでもねーよ……」
「あだっ、いたっ!」

がすがすと乱暴に頭を撫でられて白雪はなにがなんだかわからない。
紗揺は手を離すとにやりと笑う。

「あとでお前んとこ、行ってやるからしっかり接客しろよ」
「あはっ、指名料は高いよ、羊羹十個ゆきー」

は、と紗揺は笑う。

「十個でいいんだな」
「え」
「やるよ」
「え、え、まじ? ちょ、サユ、なんか、おかしくね!?」

やる、なんて言われると思っていなかった白雪は、一瞬の間をおいて言葉を紡ぐ。
紗揺はおかしいのか、と眉をひそめた。

「や、いや、あ、ありがとな! 俺羊羹のためにがんばる! ゆき!」

でもそれも、白雪にとっては何でもないことで、すぐに笑顔が向けられる。
もう、頭の中は羊羹に馳せる思いだけだった。

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