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ケンカの理由 (400hit REBORN! ヒバツナ)
また始まった…
ツナはため息をついた。
目の前では、骸と雲雀が臨戦態勢で睨み合っている。

「今日こそ僕の綱吉君から手を引いて頂きますよ。」
「寝言は寝てから言いなよ、変態南国果実モドキが。綱吉は僕のだよ。」

こうなると、もう手がつけられない。
その間、ツナは存在していないかの如く、放置される。

「はぁ…」

再び大きなため息をつく。
骸が来ると、いつもこうだ。
むしろ、俺が雲雀さんと話してる時間より骸と戦ってる時間の方が長いんじゃないかと感じる。

決着がついちゃえば、こんな毎日戦わなくても済むのに…

いつも、骸が終わりを切り出すか、草壁さんが仕事を持ってきて、うやむやになるか、どっちかだ。2人が最後まで戦った試しがない。




骸じゃなくて、
俺だって、
かまって、
欲しいのに…



胸の中に靄がかかって、苦しくなる。

どうしようもなくて、気付けば、自分の声が応接室に響いていた。


「雲雀さんのバカァ…そうやって、骸と仲良くしてればいいじゃないですか!!!!」



ツナの声に、言い合いをしていた2人の視線がツナに向く。
言い終わると、ツナは応接室のドアを荒々しく閉めた。





雲雀が自分ではなく、骸の方に向いてしまうことが、ひどく腹立たしく思った。

雲雀は毎日のように、自分を応接室に呼び出して、たわいもない話をしてくれたり、好きだと言ってくれたり、身体を重ねることもあった。

しかし、一度骸が来れば、自分はほったらかし。

自分を好きだと言ってくれた言葉も、優しく撫でてくれた腕も、全て軽く感じられた。



「あーもう、雲雀さんのバカァ!!!」



放課後の廊下にツナの叫びがこだました。



















応接室は静寂に包まれ、困惑した雰囲気が流れる。雲雀はやっとの思いで、声を発した。

「っ、綱…吉?」





いつものように、放課後、綱吉との時間を過ごしていた。そこへ、どこから入ってきたのか、歩くパイナポーが来た。綱吉を変質者から守ろうと戦っていたら、急に綱吉が出て行ってしまった。

声を荒げているのに、どこか哀しそうな綱吉に、声が出なかった。



「おやおや、『バカ』とは、愛想を尽かされたようですね。」



そんな骸の声は雲雀の耳に入っていない。

ハッと正気に戻ったかのように、ドアの方へ向かう。



「戦線離脱ですか?」


相手から逃げるような、戦線離脱は雲雀にとって、最もあり得ないことだと知った上で、骸は挑発するように言った。



「君みたいな奴に構ってる暇はない。」



ツナを追い掛けるように、雲雀も応接室を飛び出していった。

雲雀の顔に、いつもの余裕はない。



「クフフ…今日も惨敗ですね…」



残された骸がポツリと呟いた。









放課後の校舎の中を雲雀は急いでいた。

はたから見れば、風紀委員長がまた風紀を乱す者を捕らえに行く、としか見えない。しかも、雲雀が急いでいるなど、そう滅多にない。余程の強敵を捕まえにいくのだろうか。

しかし、雲雀の目的は、自分の恋人である「沢田綱吉」。

ツナの行きそうな場所を片っ端から見て回る。綱吉の教室、体育館、保健室…残るは屋上だけ。

ギィと鈍い音を立てて、屋上の扉が開く。少し肌寒い秋風が屋上のアスファルトをなぞり夕焼けに染まりつつある空へと帰っていく。

扉とは逆の壁際に俯いた綱吉を見つけた。



「綱吉、随分探したよ。」

「骸とは決着ついたんですか?俺なんかにかまってないで、骸と思う存分戦ってきたらいいじゃないですか。」



答える綱吉の表情は俯いていて分からないが、言葉に棘があり、怒っているのが明らかだった。



「綱吉が急に出ていくから。」
「2人の邪魔かと思って出てきたんですよ。早く戻って下さい。」



抱え込む膝をさらに強く抱え込み、俯く。

雲雀はツナの近くにしゃがむと、ツナの頭を掴み、グイと引き上げた。

ツナの目には涙が溜まっていて、雲雀が顔をあげた反動で、ポロリと零れ落ちた。

「っ、離して、下さい。」
「嫌だね。なんで、応接室を出て行ったのか、泣いているのか、ちゃんと説明してよ。」

ツナの潤んだ瞳を雲雀の漆黒の瞳が捕える。
その瞳にツナはおずおずと理由を言い始めた。

「だって…だって、雲雀さんが、」
「僕が?」
「雲雀さんが骸ばっか相手にしてるから…」
「好きで相手している訳じゃないよ。綱吉をあの変態から守るために咬み殺そうとしてるだけ。」
「俺を…守る、ため?」
「なんで戦ってるのかも知らずに飛び出したの…」

雲雀は呆れた顔をしたが、そこには安堵の色も見えた。

「すいません、雲雀さ…」

強く抱き締められて声が止まる。

「…嫌われたかと思った…」

耳元で聞こえる雲雀の声は弱々しく、少し震えている気がした。

「俺が雲雀さんを嫌いになる訳がないじゃないですか。むしろ、逆かと思ってました…」
「逆?」

ツナの視界に雲雀が現れる。

「その、雲雀さんが、俺じゃなくて、骸が好きなのかと…って、あり得ないですよね。」
「…」

あまりに衝撃的な言葉に雲雀は言葉を失う。

「雲雀、さん?」
「本当にあり得ないね。何があっても僕が好きなのは綱吉だけだよ。」

雲雀の声に先程の弱々しさはもう無く、強く真っ直ぐツナの心に届く。

「俺も、雲雀さん、だけです…」

恥ずかしさから夕焼けに照らされた頬をさらに赤くする。
そんな綱吉にキスを1つ落とす。

「帰ろうか、綱吉。」
「はい、雲雀さん。」

2つの寄り添う背中が薄暗くなった校舎に消えていった。









また始まった。
目の前では、骸と雲雀が臨戦態勢で睨み合っている。

「今日こそは僕の綱吉君から手を引いて頂きますよ。」
「寝言は寝てから言いなよ、このド変態南国果実モドキが。綱吉は僕のだよ。いい加減諦めなよ。」

でも、もうため息をつかない。
だって、雲雀さんは自分のために戦ってくれているから。

「雲雀さん、頑張って!!!」

その言葉が1番骸に効くことをツナは知らない。




終焉




―アトガキ―
400hitリクエストのヒバツナでした。
三つ巴風にしてみましたが…骸が可哀想すぎです。あ、でも骸のあだ名をつけるのは楽しかったです(o´∀`)

こんなんで申し訳ないですが、
400hit、鯨尾様に捧げますm(_ _)m

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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