学園の扉
そして彼女はトリップした。
真っ白な空間。ここはどこだろう…。
そんなことを考えていると、いくつもの扉が目の前に現れた。
『こんにちは、東雲綺羅さん。ここはどこだかご理解いただけているでしょうか?』
いえ、さっぱり理解しておりません。
気付いたらこんなとこにいたのに、わかっているわけがない。
『そうですね、すみません。綺羅さん、あなたは自分がなくなってしまったのは理解できますか?』
…そうだ、小さい男の子を助けて、自分が死んで…
あ、あんとき死んだんだ。ちょっと、医者もう少し頑張ってよ。
なんてKYなことを考えていると、その声がふふっと笑った。
『あなたは面白いですね。そして光がある…正義感も。あなたなら出来るかもしれません。数々の人ができなかったことが…』
「数々の、人ができなかったこと…?」
意味がわからない。何を言っているんだ?この人(?)は。
『核心から説明いたしますと、ここはパラレルワールドのようなところです。
そしてここにある扉のひとつ、学園アリスに繋がっている扉に入って欲しいのです』
穏やかに話してはいるが内容が意味不明。パラレルワールド?学園アリス?は?
「…これは…よくある夢小説での展開では…」
『よく気づきましたね。そのとうりです。
下界では夢小説で想像を膨らませているようですが…実際に入ってみるとそれはとても難しい。何もかもが思い道理になると思ったら大間違い』
それはそうだろう。僕がさっき考えていたことだった。
でもだからなんだというの?その続きが聞きたい。
『そう焦らないで。まぁ、つまりはあなたに実際に学園アリスに入って皆さんを助けて欲しいのですよ』
…おぉう!?やっぱり!?そういう展開なんだね!?
でも僕そうだよなぁ、死んじゃってるってことは、もう外科医?三次元?にはも出れないわけだし…
『いい話だと思いませんか?そりゃあ、一度死んでしまったことは辛いかもしれませんが、また生を受けることができるのです。
記憶が残ったまま。そして、あなたが生前助けたいと言っていた方々を助けることができる』
確かにこれは悪い話ではなかった。むしろいいくらいだ。
どのみち僕には家族がいない。事故で亡くなってしまったから。
『今までにも何回か挑戦してきた方はいるのです。実は、あなたのご家族であるお父さんとお母さんにも試していただきました』
「…えぇ!?!?!?」
マジで!?てかお父さんとお母さん学アリ知ってんの!?
超意外なんだけど!?
『そうですね、あなたのご家族は大変正義感に溢れていて…あなたと同じ目をしていた。
この人たちならあるいは…と思い、柚香さんが子供の頃の時代に…教師として派遣してみたのですが…』
「無理だった、と…」
そうか、あっちでもまた、死んじゃったのか…
『でも、あなたなら出来ると思います、あなたなら…もう一度、信じてみたいのです。よろしくお願いします…』
「…僕の派遣される時代は、蜜柑の時代…?」
そうならば、なんて親子の因果なのだろう。
柚香さんの時は僕の親が。蜜柑の時は僕が。これこの上ない親子の絆ではないか。
『はい、そうですよ。…では今から派遣いたしましょう。あなたのアリスは全知全能、無効化。
全知全能はその名の通り、なんでも思いのままにできます。どんなこともできます。そのくらいの最強設定をお望みだったのでしょう?』
もちろん。そのほうがより確実に守れる。
『では詳細はあなたの脳内にインプットしておきます。良き旅を━━━━…』
その言葉を後に、僕は扉をくぐった。
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