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純情乙女
11



『蓮…』


あたしの姿を確認した蓮が、近付いてきた。


「誰と…誰と居たんだよ?」


蓮は低い声で、でも優しい口調だった。



『あっ、実は…』


「何なんだよっ!俺に、言えねぇのかよっ!
俺には…
俺には、何でも話せるんじゃなかったのかよっ!」



あたしの肩を掴みながら、蓮は、訴えるように、言った。



「…ごめん。急だったから…」



「最近、花音おかしいぜっ?俺のこと避けてるしよ。」



避けてた訳じゃない。


土方さんのことで、頭がいっぱいだったからだ。


バイトしてる時間、今までは、何かしら蓮と連絡とってたから、
毎日一緒に居るようだった。



でも、あたしがバイト始めてからは、それが無くなった。



あたしは…



ズルイ―――



『違うよっ!バイトが忙しくてさ…「どうかしやしたかィ?」



何で…


何で、このタイミングで出て来るのよ…


「「あっ、この前の…」」



二人の声が、かぶった。



「そーゆー事かよっ!
俺に、言えねぇってことは、コイツが本命ってか?!」



今まで、見たことがない蓮の表情。


怒りが満ち溢れているってゆーのは、
こんな顔のことなのか?



「何、一人で熱くなってんでィ。」



小ばかにしたような、総悟の態度が、更に火に油を注ぐ。



なんか、訳わかんないケド、修羅場じゃないっ?!



ってゆーか、どっちも、あたしの彼氏でもないし。


何なんのよっ?



…あれっ?


総悟、楽しそうだ…


コノヤローッ!!



『勘違いしないでよっ!この人とは、そんな関係じゃないっ!』



「じゃあ、俺のことは…」



蓮が、言いかけて、やめた。



「悪かった。俺一人で、勝手に怒って。俺に花音が、何でも報告する必要なんてないもんな。ホントに悪ぃ…」



そう言って蓮は、走り去ってしまった。



『あっ…』


あたしは、その場から動くことが出来なかった。



「追い掛けなくて、いいんですかィ?」


『何言ってんのよっ!総悟が、ぐちゃぐちゃにしたんじゃないっ!』


「俺は、二人の背中を押したつもりだったんですがねィ…」



あたし達の関係に、気付いてたの?


「ヤローの気持ち、わかってるんだろ?
このままじゃいけねぇってことも…」



総悟が言い終わる前に、あたしは走り出した。



今も、そう。


蓮が、あたしから離れないのは、わかっていた。


蓮も、あたしが、気持ちを受け入れないことを、わかっているから、今以上の関係を押し付けなかった。


あたしは、それを利用してたんだ…


ヒトリニナルノガ


サミシイカラ――



ごめん、蓮!


お互いの気持ち、はっきりさせないと、いけないよね?



『…蓮っ!』


やっと、追い付いた。


驚いて、振り向いた蓮。


「どっ、どうしたんだよ!?」


『はぁ、はぁ…ごめん。今のままじゃ、ダメだよ。蓮を苦しめてまで、そばに居てほしいなんて、あたし…あたし…』



涙が溢れて、言葉が出ない。


「それは、俺も一緒だぜ。花音に気持ちを伝えなければ、俺から離れないって、わかってたから。
俺は、今の関係が壊れるのが怖くて、理解者のフリしてただけだ。
それに、花音に振り回される奴らとは違うって、思いたかった。
気持ちを伝えたら、奴らと同じじゃん?
だから、気持ちをしまい込んだんだよ。
バレてたみてぇだけど…」


苦笑いをしながら蓮は、言った。


『蓮…』


「そんな顔すんなよ。
初めから失恋してんだしよ。
花音が男に暴走するのを止めれんのって、俺ぐらいだろ?」


『それが、ダメなんじゅん!あたしは蓮に頼りすぎてた。
こんなの、友達じゃないよ!』



「俺は、今の関係が一番心地いいんだよ。
まぁ、花音に本命が出来たら、俺から離れてくってのは、覚悟済みだ。」


『蓮…。違う!違うよっ!蓮は、あたしにとって、特別だよ!
他の男達とは違うっ!
でも…』



「その言葉が聞けただけで、充分だよ。
…で、やっと出来たのか?本命ってヤツ。」



『…まだ、わからない。自分でも解らない。
でも蓮に言えなかった。自分の中の気持ち…』



「それが、好きって気持ちなんじゃねぇーの?



『へっ?』


「だってよ、今まで、男関係で報告出来なかった事ってあるか?
それは、ホントに好きじゃなかったから出来たんだよ。」


『そうだね…。自分でも驚いてるんだよ。
その人の行動ひとつで、喜んだり、動揺したり、悲しくなったり…
恋愛経験豊富なつもりが、全くの初心者だよ…』



「花音にそこまで想われてるヤツが、羨ましいぜ。全くよぉ。
陰ながら、応援してやるよ。
俺は、ホントの花音知ってるからよ。
花音なら大丈夫だよ。なんせ、ルックスは抜群なんだからよ」


そう言って蓮は、ニカッと笑った。


いつもの蓮の笑顔だった。





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あきゅろす。
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