純情乙女
7
「花音、隠れろっ」
そう言われて、総悟に引っ張られて、路地裏に隠れた。
総悟の目線の先には、一軒の喫茶店。
???
『何?探偵ごっこ?』
「あの喫茶店に、女の店員が居るのが、見えるかィ?」
『うーん?あっ、見えた!』
その女の人は、2、3歳年上ぐらいで、とても綺麗な人だった。
『あの綺麗な人?誰?』
「近藤さんの、想い人でさァ。」
『はぁーっ?何で、覗き見なの?ってゆーか、何で、あたしが見る必要があるのよっ?!』
「この前、女物の服屋で会っただろ?あれは、あの人にプレゼントする服を買いに行ってたんでィ。」
…そうなのっ?!
土方さんの奥さんのプレゼントじゃなかったんだっ!
あたしは、ニヤケそうになる顔を、必死で押さえた。
『ふ〜ん。何で近藤さんが自分で買わないの?』
「あれ位の年の好みがわかんねぇから、俺達が頼まれたんでィ。でも、気に入らなかったらしくて、突き返されたんでィ。土方コノヤローの趣味が悪いせいでさァ。」
『えーっ!ほんとに土方さんが、選んだのぉ?』
あたしは、疑いの眼差しを送った。
「ほんとですぜィ。そういえば、花音に会ってから、様子がおかしくなりやしてねィ。なんか、ヤケクソになって、適当に選んだんでィ。
花音が男連れで居たのが、ショックだったんですかねぇ。」
そう言って、得意の黒い笑みを見せた。
意地悪されてるって、わかってるのに、
なんだか、嬉しくなってきた。
「何、ニヤついてんでィ!土方コノヤローが役立つだったから、花音に見立ててもらおうと思って、ここに連れて来たんでさァ。」
何がデートだっ!
ただのパシリじゃん!!
『怒ってるんですかィ?』
あたし、顔に出てた?
珍しく、総悟が真顔だ。
そんな顔されたら、怒れないじゃん。
『ううん。怒ってないよ。あの人に似合う服を選べばいいんでしょ?
でも、何で服なの?』
「俺も、よく解んねぇんでさァ。とにかく、服をプレゼントしたいらしくて…」
『服のプレゼントって難しいんだよねぇ。好みがあるし…あっ、あの人っ!』
見覚えのある人物が、喫茶店に入って行った。
「知り合いかィ?」
『うちの店で働いてる、新八君だよ。』
「…あんなヤロー、見た事ねぇぜぇ。」
『そうだろうね。だって調理場に居るから。(しかも、影薄いし…)
でも、何であの喫茶店に…。家が近所なのかな?』
そんな事を話しながら、あたし達は、路地裏に隠れて、まだ、探偵ごっこをしていた。
あっ、新八君が出て来た。
ってゆーか、出て来るの早くね?
その後ろに続いて、例の女の人もついて出て来た。
「無理しないで下さいよ。姉上。」
………姉上ーっ!?
声を上げそうになったと同時に、総悟の手が、あたしの口を塞いだ。
「危ねぇ、危ねぇ。こんなとこで気付かれたら、隠れてる意味がねぇだろ?」
『…ふいまへん。』
あたしはの口は、まだ総悟の手で塞がれたままだった。
「くっ、くすぐってぇ!」
総悟は慌てて、手を離した。
『あはは。何、赤くなってんの〜?』
「花音の唇が、柔らかかったからでさァ。」
からかったつもりが、逆にやり返された。
「そんな事より…」
『あの二人、姉弟?』
「みたいですねィ。」
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