[携帯モード] [URL送信]

純情乙女




―――午前10時。


居酒屋前。


…結局、来ちゃったよ。


「待ち合わせ時間に来るなんて、楽しみだったんですかィ?」


チェックのシャツにデニム姿で沖田さんは、立っていた。


『楽しみだなんて…』


と、言いつつ、どんな服装で行こうか、散々迷ったのは、事実だ。


ギャル系か、お姉系か、はたまた、姫系か…


やっぱり、相手は社会人だから、お姉系+姫系で、コーデしてみた。


カシュクールのピンクトップスに白のミニスカート。


どうだ!沖田っ!


「ほーっ。流石、男心がわかってまさァ。正に、俺好みでさァ。」


そう言うと、腕を掴み、あたしを引っ張る様に歩き出した。


『あっ、あのぉ…どこに行くんですか?』


「デートですぜィ。」


『いや、だから何処に?』


「俺の家でさァ。」


いつもの黒い笑み…

マジでかっ?!


『沖田さんの家ーっ!?』


「大声出すなよ。恥ずかしいじゃねぇか。それに、俺の名前は、総悟でさァ。」


『はい。知ってますケド…』


「俺と花音は、2つしか離れてねぇんだから、敬語やめろ。それと総悟って呼べ。」


何っ?
命令系?
この人、Sデスカ…


『…はい。』


「敬語っ!」


『はっ、う、うん…』


「よし。家に行くのは、嘘ですぜィ。今日は、会ってほしい人が居るんでィ。」


『会ってほしい人?』


いきなり、ご両親に紹介されるとか?!


いやいや、紹介も、なにも、あたしたち、付き合ってないよね?


「今、変な事考えていやせんでしたかィ??」


ニタッと笑いながら、腕を絡ませてきた。


「こうしてると、恋人みたいですぜィ。なっ、花音」


そんな可愛い顔で覗き込むもんだから、柄にもなく、恥ずかしくなってしまった。


『何言ってんですか…』


「敬語っ!」


そんな、やり取りをしながら歩き出そうとした時、あたしの携帯が鳴った。


…蓮からだ。


『もしも「今、何処に居んだよっ!」


いきなり怒鳴り声。


『へっ?』

「学校休んで、何処行ってんだって、聞いてんだよ!」


大声出すから、丸聞こえじゃないよっ!

ちらっと沖田さんを見ると、黒い笑みを浮かべていた。

と、思ったら、携帯を取り上げられ、


「花音は、俺とデートでさァ。じゃあな。」


と言って、切ってしまった。


放心状態のあたし。


間も入れず、また携帯が鳴った。


沖田さんは、電源を切った。


「これで、邪魔は入らねぇ。行きやすぜィ。」


この男を敵に回してはいけない。


あたしは、心からそう思った…





[*前へ][次へ#]

6/11ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!