純情乙女
6
―――午前10時。
居酒屋前。
…結局、来ちゃったよ。
「待ち合わせ時間に来るなんて、楽しみだったんですかィ?」
チェックのシャツにデニム姿で沖田さんは、立っていた。
『楽しみだなんて…』
と、言いつつ、どんな服装で行こうか、散々迷ったのは、事実だ。
ギャル系か、お姉系か、はたまた、姫系か…
やっぱり、相手は社会人だから、お姉系+姫系で、コーデしてみた。
カシュクールのピンクトップスに白のミニスカート。
どうだ!沖田っ!
「ほーっ。流石、男心がわかってまさァ。正に、俺好みでさァ。」
そう言うと、腕を掴み、あたしを引っ張る様に歩き出した。
『あっ、あのぉ…どこに行くんですか?』
「デートですぜィ。」
『いや、だから何処に?』
「俺の家でさァ。」
いつもの黒い笑み…
マジでかっ?!
『沖田さんの家ーっ!?』
「大声出すなよ。恥ずかしいじゃねぇか。それに、俺の名前は、総悟でさァ。」
『はい。知ってますケド…』
「俺と花音は、2つしか離れてねぇんだから、敬語やめろ。それと総悟って呼べ。」
何っ?
命令系?
この人、Sデスカ…
『…はい。』
「敬語っ!」
『はっ、う、うん…』
「よし。家に行くのは、嘘ですぜィ。今日は、会ってほしい人が居るんでィ。」
『会ってほしい人?』
いきなり、ご両親に紹介されるとか?!
いやいや、紹介も、なにも、あたしたち、付き合ってないよね?
「今、変な事考えていやせんでしたかィ??」
ニタッと笑いながら、腕を絡ませてきた。
「こうしてると、恋人みたいですぜィ。なっ、花音」
そんな可愛い顔で覗き込むもんだから、柄にもなく、恥ずかしくなってしまった。
『何言ってんですか…』
「敬語っ!」
そんな、やり取りをしながら歩き出そうとした時、あたしの携帯が鳴った。
…蓮からだ。
『もしも「今、何処に居んだよっ!」
いきなり怒鳴り声。
『へっ?』
「学校休んで、何処行ってんだって、聞いてんだよ!」
大声出すから、丸聞こえじゃないよっ!
ちらっと沖田さんを見ると、黒い笑みを浮かべていた。
と、思ったら、携帯を取り上げられ、
「花音は、俺とデートでさァ。じゃあな。」
と言って、切ってしまった。
放心状態のあたし。
間も入れず、また携帯が鳴った。
沖田さんは、電源を切った。
「これで、邪魔は入らねぇ。行きやすぜィ。」
この男を敵に回してはいけない。
あたしは、心からそう思った…
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