三十路の第一歩 1 荷物を持って、表に出ると、パチンコ屋から出て来た長谷川さんと、鉢合わせした。 「あぁーっ!名前ちゃんじゃない〜っ!大変な目に合ったらしいねぇ。 元気にしてたぁ?」 相変わらず、プーなんだな。長谷川さんは。 「はぁ、なんとか… 長谷川さんは、相変わらずみたいですね。」 「勝利の女神が居なくなっちゃったから、さっぱりだよ〜。」 そんな事、言ってんじゃなくて、相変わらずプーだって言ってんのっ! 「で、名前ちゃん、今どうしてんの?」 『今、真選組でお世話になってます。』 そう言って、少し離れた所で、段ボールを持って立っている、ダンディ土方の方をチラリと見た。 「えっ?真選組?!」 『あたし、犯人扱いされて、逮捕されそうになったんですよ。 とりあえず、誤解は解けたんですけど、住むとこなくなったから…』 「あぁ、そうか。ここの2階に住んでたんだもんね。 あっ、そういや、銀さんが前の店長の事、調べてたみたいだったけど…」 『銀さんがっ?!』 あたしは、驚きの余り、大声を出してしまった。 「万事屋が、何だって?」 その声に、ダンディ土方が話に混じってきた。 そーいや、銀さんと知り合いっぽかったよなぁ… 「あっ、あの事件の後、銀さんがここの従業員に何やら聞き出してたんだよ。 どうやら、あの店長、女にだらし無かったみたいでさぁ…」 もしかして、あたしが店長を突き落として逮捕されたの知って、調べてくれてたの? まさかねぇ… でも、事件の後に、店長の事を調べるなんて、 他に理由がない… あたしは、肩に掛けていた、バックを落としてしまった。 長谷川さんも、あたしの様子が変わったことに気付いて、じゃ、俺は。と言葉を残して、去って行ってしまった。 「おい、けーるぞ。」 そう言って、ダンディ土方は、あたしの肩を抱き寄せた。 [次へ#] [戻る] |