三十路の第一歩
6
『あっ…』
「どうでィ?少しは、落ち着きましたかィ?」
そう言って、あたしの前にカフェオーレを置き、座った。
「あの夜、飲んでただろ?」
『あぁ…。覚えてたんだ…』
「だいたい、あんな時間に、あんな所で、泣きながら飲むって、酒が定番ですぜィ?それが、こんなもん飲みながら泣いてたら、覚えてもいますぜィ。」
『あは…そう言われれば、そうかも。』
いただきます。と言って、カフェオーレを一口飲んだ。
心地よい甘みが、脳を落ち着かせた。
『おいし…』
「それは、よかった。じゃっ。」
それだけ言って、出て行こうとしたので、
『あの…』
「何でィ?」
『ありがとう。』
「俺は、あんたが何者だって、別に構わねぇですぜィ。」
沖田さんは、ニッと笑って出で行った。
変な人達…。
もっと、冷たくしてくれたら、いいのに…
そう思うと、涙が零れた。
あたし、嘘ついてんのに。
心が痛い。
「苗字さん、今、いいですか?」
今度は誰だ?
『はい。どうぞ。』
「よかったら、お風呂でもと思って。」
人の良さそうな笑顔で入って来たのは、近藤さんだった。
『お…風呂?』
「ええ。疲れたでしょう?そんな時は、風呂にでも浸かってゆっくりしてください。今の時間なら、誰も入ってませんし。」
近藤さんは、ニコニコしながら、話している。
『でも…』
「心配だったら、俺が見張りに着きますよ。あっ、俺が覗きたいとか、そんなこと思ってませんからっ!」
ブンブン手を振って否定してるけど、そこまで言われると、逆に怪しいですよ…
『いえ、そうじゃなくて、あの…着替えとか、ありませんし…』
そう言うと、待ってたかのように、近藤さんから手渡されたのは、着替えだった。
「そう思って、実は買いに行ってたんですよ。」
とびっきりの笑顔で渡されたのは、浴衣と…
赤のTバックのパンティーとブラジャーだった…
「「何で、そんなもん買ってくんだーっ!!」」
あたしが言葉を発する前に、襖を蹴破り、近藤さんに、蹴りを入れたのは、
土方さんと、沖田さんだった…
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