Silver Chain 6 『土方さん…』 「どうやら、只の知り合いって訳じゃねーみてーだな」 煙草をふかし、あたしの方へ目線を向けた。 この人の洞察力は、獣並みだ。 ここで、下手に嘘をつくのは、逆効果だろう。 さらに、詮索されるに違いない。 『昔…傷を負って倒れていたところを、助けてもらいました。』 嘘じゃない。 心に傷を負ったあたしを、銀時は救ってくれた。 「ほぉ〜。じゃ、ヤローは命の恩人って訳だ。 …と、すりゃあ、涙のご対面ってのが、お決まりのパターンじゃねーのか?」 冗談混じりで言ってるけど目が笑ってない。 何を探ろうとしてる? あの口振りじゃ、土方も、只の顔見知り程度じゃないだろう。 木刀差してるのに、攘夷として見ていないようだし… もしかして、銀時の過去? 腹の探り合いで、あたしはこの人に勝てるだろうか? 声を掛けることが出来なかった、あたし。 逃げるように去っていった銀時。 どう見たって、怪しい… どうやって、誤魔化したらいい? あたしは、下を向いたまま答えることが出来なかった 「まっ、おめーらに何があったがは、知らねーが… 」 そう言って、空を仰ぎながら、煙草をふかす。 あれっ? 何か、勘違いしてる? 否定しようと思ったけど、そーゆー事にしておいた方が、何かと都合がいいんじゃない? きっと、土方の事だから、男と女の関係だった―― って事にしておいたら、これ以上何も聞いてこないだろう。 『…何も…ないです…よ』 あたしは、意味ありげに、曖昧に答えた。 「そうか…」 案の定、土方はそれ以上、聞いてはこなかった。 「おめーも、つれーだろうが、真選組に居る以上は、この町を護ってもらわなきゃならねー。 まっ、ある程度の便宜は図ってやってもいいがな。」 優しい笑みを残して、土方は立ち去っていった。 初めて見せた、副長ではない顔の土方に、驚きながらも 胸の奧が、チクッとしたような気がした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |