少年Kの感慨
「あっ。アゲハー!」
ギルドユニオン本部で報告を済ませ街中で情報集めの最中カロルはアゲハの姿を見つけ、手を振りながらその名を呼んだ。
「お?どしたー?カロるん」
「えっと…地下水道では…その、ありがとう!」
「あぁその事ね。あれは俺が勝手に落ちただけだよ。だから気にしないの」
アゲハは変わらぬ笑顔を浮かべながらカロルの頭を優しく撫でる。そんな彼につられてカロルも微笑んだ。
するとカロルは思い出したようにカバンからペンダントを取り出した。
「これ!アゲハのだよね?」
「…無くしたかと思ってた」
「崖のとこに落ちてたんだ!本当にありがとう!アゲハ」
アゲハは手渡されたペンダントを受けとると首からさげた。そして逆十字の形をした飾りを手にして、微笑みを浮かべる。
「こちらこそ、拾ってくれてありがと」
「アゲハにとって大切なものなんだね」
「うん。気付いた時から身につけてた物なんだ」
「気付いた時から…?」
「本当だったか。“邪神の片目”が来てるって話は」
アゲハとカロルの会話を割くように、男の声がした。
2人が振り向くと、そこには“魔狩りの剣”の3人が立っていた。
「げっ……魔狩り…」
「ナン!」
「憧れの人と随筆親しくなったみたいね。カロル」
「久し振りだな…“邪神の片目”」
「そ、そーですねー…」
「アゲハ?」
「ははっ!そいつはうちのボスが苦手なんだよ」
ティソンが声をあげて笑うとナンも笑った。アゲハも一緒になって苦笑いをする。
カロルだけがわからないと言わんばかりに首を傾げる。
「まだ俺を狩る気なんですか…貴方は」
「俺の狙いはお前に巣食う邪神」
「あ、じゃあ俺は関係ない、」
「その邪神を飼い慣らしているお前も、狩る対象ではある」
クリントは不敵な笑みを浮かべると自分の武器に手をかけ、1歩アゲハへと詰め寄る。
アゲハはすかさず1歩後ろへ下がった。
そして大きくわざとらしい咳払いをする。
「あー!俺、ユリさんと約束があったんだー!遅れたら怒られちゃうよ〜…ってことでカロるん!後は任せたっ」
声を張り上げながら早口で言うとカロルの背中をぽんっと叩いて、脱兎の如くその場から立ち去った。
その速さにカロルとナンは唖然とし、クリントとティソンは鼻で笑った後、声にも出して笑った。
「まぁ…“邪神の片目”は今“凜々の明星”と共に行動しているらしいからな」
「えっ…」
「覚悟しておけ、と伝えろ」
“魔狩りの剣”の3人はカロルを背にし、ギルドユニオン本部へと向かっていった。
残されたカロルはその背中を見送った後、アゲハが走り去った方向へ視線を向ける。
「…ホント、色々苦労してるんだな。アゲハ」
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