紫陽花 3 それからは、昨日観たドラマが面白かったとか金井の好きな漫画の新刊が明日発売日だとか。 そんな普通の高校生らしい話に花を咲かせた。 「でさー、明日発売のでやぁっとエグレッテルが復活するんだぜ!!」 「よかったー!生きてたんだね!!」 「あぁ!!あんな敵も倒して帰って来るなんて…、ほんッと最高!!」 「はやく読みたいなーっ」 やっぱり最強だ!!と言ってエグレッテルの素晴らしさを熱弁する金井。 それに僕もこくこくと頷く。 あ、ちなみにエグレッテルは金井の好きな漫画に出て来る戦士だよ。 親友のゴートンを助けるシーンは何回読んでも涙が…… 「…………ひッ、」 「……金井?」 一瞬で強張った表情。 青ざめた顔で、教室の後ろを凝視している。 「ぇ……なに…?」 視線の先を追おうと振り返る。 あ。 「…慈雨。」 ビクリ、と金井の肩が跳ねた。 「おかえりー、恵ちゃん。」 教室の後ろのドア辺りにいたのは恵ちゃんだった。 まっすぐにこちらに向かって来る。 気づけば騒がしかった教室がしん、と静まり返っていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |