[携帯モード] [URL送信]

紫陽花
君と雨音


こんなに雨が降る日の夜は、どこか懐かしくて…ちょっぴり切なくなる。

理由なんてわかんないけど。

いつの頃からか不思議と僕にとっての雨は、ただの雨じゃなかった。


まさに滝のような雨音が、全てをかき消してゆく。

まるで、この世界にひとりきりみたいだ。

孤独

不安

悲哀

あー、どれも違うな。

けど、自分の感情がすごく不安定なのはわかる。

それなのになんだか落ち着くんだ。

そんな不思議な空間が僕にとっての、雨。


雨が塵や埃をさらったあとの澄んだ空気は、しっとりとして。

開けたままの窓からは、雨の匂いと、庭先に咲く梔子の甘い香が運ばれてくる。


夜の雨。

独特の穏やかさのような、寂しさのようなものを孕む空気。

それを感じながら僕はひんやりとした机に頬杖をついて、ただその空気に浸っていた。



[次へ#]

1/23ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!