紫陽花
君と雨音
こんなに雨が降る日の夜は、どこか懐かしくて…ちょっぴり切なくなる。
理由なんてわかんないけど。
いつの頃からか不思議と僕にとっての雨は、ただの雨じゃなかった。
まさに滝のような雨音が、全てをかき消してゆく。
まるで、この世界にひとりきりみたいだ。
孤独
不安
悲哀
あー、どれも違うな。
けど、自分の感情がすごく不安定なのはわかる。
それなのになんだか落ち着くんだ。
そんな不思議な空間が僕にとっての、雨。
雨が塵や埃をさらったあとの澄んだ空気は、しっとりとして。
開けたままの窓からは、雨の匂いと、庭先に咲く梔子の甘い香が運ばれてくる。
夜の雨。
独特の穏やかさのような、寂しさのようなものを孕む空気。
それを感じながら僕はひんやりとした机に頬杖をついて、ただその空気に浸っていた。
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