紫陽花
7
それから…
心配させたくなくて誰にも言わないことも。
電気が消えて、再び夜に包まれた恵ちゃんの表情は分からない。
でも
きっと
ただ…そばにいてくれること。
何も問わずに、ただそこに在ること。
それがどれほど困難なことか、こんな僕でも少しはわかるから。
だから、
「……ありがと、っ」
精一杯の想いを。
誰より優しくて、いつも隣にいてくれる君に。
どうか伝わりますように。
「恵ちゃんがいてくれて、よかった…」
微笑んで目をつむれば、すぐ横で静かに見つめる琥珀の瞳が見える気がして。
その安心感に抱かれ、慈雨はようやく穏やかな眠りについた。
「…おやすみ、慈雨。」
そっと額に落とされた温もりと、柔らかな囁きに守られて。
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