紫陽花
4
それにしても恵ちゃんはすごい。
恵ちゃんが一歩踏み出すたび人々が道を譲る。
賞賛、憧憬、思慕…向けられる生徒達の熱の篭った眼差し。
それらをまるで空気のように捌き、一切表情を変えず歩いてゆく。
…とてもじゃないけど、僕はそんな中を歩けないよ。
だから、恵ちゃんとはここまでだ。
恵ちゃんと離れた僕は、あまり目立たないよう人混みを抜け、ゆっくり靴箱に向かった。
少し寂しくもあるけど、あんなに見詰められながら歩けないし。
ただでさえ幼なじみで、登下校一緒で、クラスも一緒なんだからさ。
…そりゃあ、恵ちゃん信者からしたら腹立たしいだろう。
僕がいたら話しかけられないって怒るし。
…人の恋路は邪魔しちゃ駄目だよね。
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