紫陽花
3
「おはょー。」
「おー、はよ。」
学校へ近づくたび、生徒の声が増えていく。眠そうな声、快活な声、きまじめな声、めんどくさそうな声……挨拶を交わす、たくさんの声が耳を掠めていく。
…全部、男だけど。
それでも、とりあえず平和だなぁと感じるひと時だ。
だけど、それと同時に…、
「ちょッッ、藤堂様だよ…!!」
「朝から会長を拝見出来るなんて…しあわせ〜。」
「はぁ〜、やっぱり藤堂様は…いつ見てもステキ。」
……とかいう女の子…のような男子生徒の会話や、
「お早うございます、藤堂様。」
「おはようございますっ、会長!!」
……といった、とりわけ可愛らしい子達のお出迎え。
あくまで男子高校生っていうのが、なかなかホラーだ。…少なくとも、僕は怖い。
それに…はっきり言って気まずいし。そりゃもう、この場から消えたいくらいにはね。
「あ…花宮君もおはよう。」
「あら、お早うございます。」
この……すーっごいオマケってゆうか恵ちゃんの付属品みたいな扱い。
…いや、実際に僕なんて彼等からすればそうなんだろうけどさ。
でも、これが本当にいたたまれない。
「…おはよ。」
自然と声が小さくなる。こんなのは慣れてるし、別にいいんだけど…さすがになぁ、なんて思った。
まぁ彼等に悪気がないってのはわかってる。
みんな恵ちゃんのことが好きだから…やっぱ恋は盲目ってのかなー?
それに…恵ちゃんは、それ以上に人をひきつけるからね、仕方ないよ。
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