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紫陽花
目覚めれば、いつも

…ざあざあ…

どれほど年月を重ねても変わらず訪れる、梅雨。
冷たい雨は飽きることなく、ただ降り続ける。



「…ー…う、…じーう。」

ーあぁ…、まって。
ちょうど目の前に大きなチーズケーキがあるんだ。

ほんと特大なんだよ。
だってほら、僕より大きいでしょ?

すごくすごく美味しそう。
これは食べなきゃ。


「……慈雨、」

ー…まだだめなのに。

だけど…呼ばれてるなら、しかたないなぁ…


「…ん〜…け、ぃちゃん…?」


うっすらと開いた視界に映るのは恐ろしいほどの美貌だった。

うん、いろいろ超えちゃってるよ。
常識とか常識とか。

思わず見惚れてしまうのは…その存在感からか、はたまた容姿からなのか。

長い付き合いだけど…いまだにちっとも解らない謎のひとつ。


「…大丈夫、慈雨?」

そのまま、ぼぅっとしてたら顔を覗き込まれた。

「…慈雨?」
「ぁ、……ちーずけーき…。」

「チーズケーキ?」

長い指がそっと前髪をかきあげる仕草が心地よい。

「…ん、たべたかった…。」

思わず恨めしげな声になる。

目を擦りながら返せば呆れたように笑う気配がした。

「帰りに買って帰ろうか。」
「………ほんと?」

恵ちゃんは小さく笑った。

「あぁ、とりあえず帰ろう。もう暗い。」

ガタッと立ち上がる音に、僕もゆっくりと身を起こして大きな欠伸をこぼした。

外はもう真っ暗だ。

「うわぁ…どれくらい寝てた…?」
「SHRの後から。…ちょうど2時間くらいかな。」



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