紫陽花
2
カタン、カタン…
…なんだかなぁー
小さくため息を吐けば目の前に立つ恵ちゃんと目があった。
「慈雨?…どうした?」
「……。」
…あえて目線を外して窓から流れる風景に目をやった。子供っぽい事してるってわかってるけど…だって、納得いかないんだからしょうがない。
だってさ。
「慈雨?」
いつだって、恵ちゃんは僕を子供扱いするんだ。自転車にしても、今の電車にしても。いつも僕を座らせる。
…同い年なのに。
「はぁー…」
そんなに頼りないのかな。
「…慈雨?」
やっぱ頼ってるからなぁ…そこはちょっと反省して、恵ちゃんが安心出来るくらいには自立しなきゃな。
まずはー、…自転車の修理かな。
「……さっきから、何考えてる?」
ーカタタン、カタンー
「ぇ?」
…何か言った?
よく聞こえなくて、問うように恵ちゃんを見上げた。
だけどその瞳は目の前じゃない遠い何かを映してるようで。
「…慈雨、降りようか。」
「ぁ、あぁ…うん。」
そうして僕等は、何もなかったかのように。いつものように僕等の通う高校…私立桐沢男子高等学校へと向かった。
それが嵐の前触れだなんて、この時は思いもしなかったんだ。
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