紫陽花
王様
朝の光がカーテンの隙間からこぼれている。
「……んー、」
目を擦りながら頭上の目覚まし時計をみれば6時29分…ちょうど起きなきゃいけない時間だ。
動きたくないけど…けたたましい音が鳴るまえに止めようと頑張って時計に手を伸ばす。
あ、…雨音が聞こえない。
夜通し降り続いた雨もあがったみたいだ。
「……慈雨?」
もぞもぞと動いていたら恵ちゃんを起こしてしまったみたいだ。
「おはょ、恵ちゃん。」
時計を止め振り返れば、朝から心臓に悪いくらいに優美な微笑と声が降ってきた。
ほんと……寝起きまでかっこいいなんて美形は得だなぁとつくづく思うよ。
それから階段を降りて、顔を洗って、恵ちゃんが泊まってたことに驚いてるお母さんに御飯をよそってもらって。
恵ちゃんが帰ってからまた自分の部屋に駆け上がって制服に着替えた。
そのままの勢いで玄関に急いだ。
「慈雨ー、お弁当はー?」
靴を履こうとしていたら呼び止められ、慌ててお母さんから弁当箱を受け取った。
…ふぅ、忘れなくてよかった。
「行ってきまーす。」
「いってらっしゃい。」
ガチャリ、と扉を開ければ確実に夏に近づいている明るい色の空が広がっていた。
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