紫陽花
1
恵ちゃんと僕はいわゆる幼なじみだ。
幼稚園、小学校、中学…そして今通っている高校も同じ。家だって隣同士だから小さい頃なんて、一日中一緒にいることもしょっちゅうだった。
小さいときは、
隣に居ることが当たり前みたいに思ってたんだ。
でも…恵ちゃんは頭がいい。
それも、すっごく。
だからいつかは有名な進学校に行くのかなぁ…って漠然と考えてた。
小学生の頃、近所のお兄ちゃんがどこかの有名私立校の受験に受かったときに、そういう学校に行くことのすごさを知ったから。
おばさんも得意げで、みんながお兄ちゃんの事を褒めて、お祝いして、将来有望だっていわれて。
そんなに違うんだってビックリした記憶がある。
それに、恵ちゃんの家がお金持ちなんだろうなぁってことはなんとなくわかってたんだ。
お家が大きいのもあるけど、
だって纏う空気が、ひとつひとつの動きが、ふとしたときの声が、ぜんぜん違う。
まるで王様みたいだって僕は思ってた。
藤堂の名で気づけなかったのは、僕が無知だったこともあるけれど…何よりそれが僕の想像をはるかに裏切るものだったから。
信じられないくらい、あまりに大き過ぎたから。
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