紫陽花
雨宿り
静かな夜に
やわらかな音を奏で
雨は優しく降り注ぐ
ー雨宿りー。
…いつからだろう
名前のせいもあってか、幼い頃から不思議と雨が好きで。
雨だと外で遊べないから、幼稚園のみんなは雨を嫌がるのに。
それでも、真っ白な画用紙とクレヨンを手に窓からぼぅっと雨をながめるのが僕は好きだった。
でも。
あまりに高すぎる空から降り続ける雨を見てると
ふとした瞬間に胸が疼いて、
ちょっとだけ…怖くなるんだ。
何か、大切なものがかけてるみたいな喪失感と
そしてそれを、すっかり自分が忘れてしまってるような焦燥感
切なくて、どうしようもなく哀しくて、胸のあたりが痛くて
どうしようもなく、やりきれなくて
幼い僕はその強すぎる衝動の扱い方なんて分からなった。
迫り来るものに堪えて立ち続けるには独りじゃだめだったんだ。
だから、怖いとつぶやきながら隣にいた恵ちゃんの手をただ握って
目をつむって
ひたすらに波だった心が落ち着くのを待っていた
…何も言わず、そっと手を握り返してくれた彼が何を思ってるかなんて知らずに。
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