[携帯モード] [URL送信]

紫陽花
遠い記憶


 堕ちては弾け
 流れては留まり

ただひたすらに叩きつける
全てを掻き消し、塗り潰すような水と音の洪水


『…ねぇ、』

ざああぁ…

いまだ雨は止みそうにない。



『…てるてる坊主つくろ?』

この空が晴れるょうに
冷たい涙が乾くょうに

…そう言って小さく笑った姿は無邪気で。


無駄だ、これは自然の理。
人の些細な思惑や迷信など天も受け付けてはくれまい?

そう確かに思うのに、言葉にすることはできなかった。

…無理じゃないか、とだけ静かに問いかけた。
それは問うというよりも言い聞かせるようだった。

窓にたたき付ける激しい雨音。響く雷鳴。

でも…と言う微かな呟きは、俺には聞こえなかった。

ただ…、そうだね、と寂しそうに。
それでもやわらかく微笑む姿は何故かあざやかで。

切なさを孕んだその幼い瞳は、すごく綺麗だった。



[次へ#]

1/6ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!