紫陽花
遠い記憶
堕ちては弾け
流れては留まり
ただひたすらに叩きつける
全てを掻き消し、塗り潰すような水と音の洪水
『…ねぇ、』
ざああぁ…
いまだ雨は止みそうにない。
『…てるてる坊主つくろ?』
この空が晴れるょうに
冷たい涙が乾くょうに
…そう言って小さく笑った姿は無邪気で。
無駄だ、これは自然の理。
人の些細な思惑や迷信など天も受け付けてはくれまい?
そう確かに思うのに、言葉にすることはできなかった。
…無理じゃないか、とだけ静かに問いかけた。
それは問うというよりも言い聞かせるようだった。
窓にたたき付ける激しい雨音。響く雷鳴。
でも…と言う微かな呟きは、俺には聞こえなかった。
ただ…、そうだね、と寂しそうに。
それでもやわらかく微笑む姿は何故かあざやかで。
切なさを孕んだその幼い瞳は、すごく綺麗だった。
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