若者たち
13
ありえない!マジでありえないっ!!
あいつ…あの野郎っ・・・俺に・・・キ…キキキキ・・・・・・言えねぇっ!とにかく!!あいつは昨日、俺のピュアな唇を奪いやがった。あの後正気に戻った俺は盛大に顔面ぶん殴って逃げてきた。
マジで信じらんねーよ…一体何考えてんだよ。今日だってふっつーに近寄ってきたし。あーゆーことって誰にでも…っつーか男にもできるもんなわけ?いや、ねーよ。
俺は正直今まで・・・例のマナミちゃんとしかしたことないよ?一般普通男子ならこんなもんだろ?まぁ、あいつが一般普通男子ではないってことは百も承知だ・・・それともあんだけカッコイイと、キ…キスとかって当たり前になっちゃってんのか?外国の人の様に挨拶みたいなもんですよ〜男も女も関係ないっす〜みたいな?あいつ常識なさそーだもんなー…
ドガッッ!!!!
「・・・・・っぐふっ」
「あーっ!木村何ぼーっとしてんだよ!!こっち負けてんのにっ!!」
あー…忘れてた。今は体育の時間でした…しかも何やってるかっていうと…ドッヂボール。高校生にもなってって思うけど、意外とやったら面白いもんなんだよね。俺は毎回逃げ専門だけど。
悪いと味方チームの連中に謝って、ボールを受けた腹をさすりながら外野へと移動する。誰かさんのせいで今日は余計なことばっか考えてるから外野の方がいいや。次郎は…俺とは敵チーム。恐ろしいボール繰り出してるよあいつ…こぇ〜・・・って、あれ?俺の腹に当てたのってもしかして次郎じゃね?
体育館のもう半分では女子たちがバドミントンやってて、次郎を見てキャァキャァいってる。カッコいいもんねぇじろーちゃんは。俺も人生一度でいいからモテてみたいわ・・・・可愛い女の子から告白とかされちゃってさ、手つないで一緒に帰ってさ、毎日寝る前に電話してさ、動物園とか遊園地でデートしてさ、夕暮れの公園でキスを・・・・・・・・・・・・・
ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!また思い出しちまったじゃねーかっ!俺の幸せ妄想タイムまで汚しやがってアイツ!!今ここにいたら無条件でぶっ飛ばしてたわ・・・・残念ながら…いや、幸いサボってんのか知らないけどヤツはいない。
はぁ・・・・あいつと知り合ってから、俺ロクなことない気がする。昨日のだって軽い冗談のつもりだったんだろーけど、俺はあいつとは違うんだよ。今まで違う世界で生きてきてんだ・・・キスってのはあんな軽々しくやるもんじゃないだろ。
っつーか俺はこんなにモヤモヤしてんのに、今頃あの男はなーんも考えずにサボってんのかって思ったら腹立ってきた。
「おい。戻んぞ」
「・・・・えっ!?あれ、もう終わり?」
「・・・・頭打ったか?俺は腹に当てたつもりだったんだがな」
…やっぱり次郎だったんだな。気づいたら授業が終わっていたらしい・・・みんなはゾロゾロと体育館から出ていく。俺、考え事してたら周り見えなくなるんだよなぁー…いかんいかん。
「自販機寄ってこーぜ。あちぃ」
「あ、うん。次郎コーヒー牛乳買って」
「なにお前死にたいの?」
・・・・・いつもの冗談じゃんっ…あぁっ!ほらまたさっさと行っちゃうんだから!!走って追いかける気にもならず、とぼとぼと次郎の後を追う。
「おっせーよ」
「んーゴメンよぉ・・・あ」
自販機へ着くと同時に次郎にぽんっ何かを渡された・・・・・コーヒー牛乳・・・じろーちゃんがデレましたよ、皆さん。
「じろーだいすきっ!!」
抱きしめようとしたら、顔面をグワッて掴まれて阻止された。あー…これだから次郎の友達はやめらんねーんだよな。なんだかんだで俺に甘いんだからっ!
次郎が購買で昼飯のパンを買うのを待って、二人で教室へ戻る。体育だったからなー腹ペコペコ…あんま動いてないけど。
「・・・・・・で?」
「んー?何?」
次郎はメロンパンの袋をベリリと開ける。うまそーだなぁ・・・俺の弁当もなかなかウマいよ。かーちゃん料理上手だからー…お、俺の好きなポテトのベーコン巻きが入ってる!
「・・・何?じゃねーよ。お前朝からキョドっててキモいんだけど。何があった?言え」
どきっ
「えー・・・・・・?何・・・も、ないよぉ?俺がキモいのはいつものことじゃんっ!はっはー」
「コーヒー牛乳返せ」
「えっ!もう飲んじゃったし!!ほんと何もねーって!!」
「・・・・・・・・・」
ひぃぃぃぃ〜っ!!黙って睨まないでくださいっ!こえーよぉ!
「もう飯作ってやんねぇーっつーか俺ん家来させねぇ。ノートもぜってー見せねぇ」
「!!…やだっ!」
思わず即答してしまった。次郎がにやりと極悪笑顔を披露する。
「じゃー言うよな?」
「・・・・う〜…はい」
・・・・・・俺が次郎に逆らえる日が来ることってあんのかな?
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