若者たち 12 「いーずーみっ!おは「ぅげっ・・・・てめぇっ・・・くんなっ!!俺の半径3メートル以内に近づくんじゃねぇっ!!・・・ィギャーッ!!マジくんなっ触んなっ!!・・・じろーっ!じろぉぉー助けてっ!!!」 朝からうるさいなぁ泉水は。仕方ないから髪の毛ワシャワシャしてあげたら、後ろで女の子に話しかけられてる狭山クンの背中に隠れちゃった。あ、女の子に睨まれてるよーただでさえモテないくせに。 てゆーか、狭山クンのとこ行かれたら近づけないよー・・・あの人普段から顔コワいけど、泉水にかまおーとしたら睨み殺されんじゃねーかってくらいの目ぇされるときあるんだもん。どんだけ大事にしてんのサ。 しょーがないから、愉快な仲間たちのところにでも行きますかー。 「おはよー恵介。今日はいつもに増して木村に嫌われてんじゃん」 「けーすけぇー最近うちらの相手してくんないよねー。あたしちょー寂しいんだけど」 「もー木村くんで遊ぶのやめなよー。かわいそーだよ」 「お前近くにいねーと女子が寄ってこねぇんだよなぁ、ははっ」 ・・・ははってなんだよ。俺ってば人気者だから、すーぐ人がいっぱい集まってくんだよねー…楽しいんだけど、なんか物足りない。いや、前までは全然物足りてたんだけどね?馬鹿みたいに騒いだり、女の子と遊んだりすんの大好きだったし。でもなー泉水と一緒にいる方が何百倍も楽しいし、面白い。 ちらりと泉水の方を窺ってみる。いまだに狭山クンのそばにひっついてる。あ、気づいた・・・ニィって笑って手をヒラヒラしたら、イィ〜ッて顔してきた・・・・やべぇーいじわるしてぇー。 周りはつまんないし、泉水には近づけないし・・・・たるい授業はサボりけってーぃ!っつーことで屋上でまったりします。 「で、何で俺までサボんなきゃなんないわけっ?」 「もーヒロちんのイケズッ!俺一人でサボる勇気ないんだよー」 ヒロを道連れに屋上へ来た俺らは、手すりに背中をつけてダラ〜ッと二人して座る。あー空は青いし風はきもちーし、最高のお昼寝日和かも。ヒロがポケットから煙草を取り出し、火をつける。こう見えて俺は煙草の臭いとか大嫌いなんだよね・・・意外とか言うなよ!一回も吸ったことないんだから。それを知ってるヒロは、さりげなく俺の風下に移動してくれる。 ちょー男前じゃない?俺の周りの奴らの中でもヒロは人間ができてるからね。あ、でも煙草はハタチになってから!! 「木村にさぁ、お前をどーにかしてくれって泣き顔でお願いされちゃったんだけど」 「なにそれっ!泣き顔ちょー見たいっ!!」 「そこかよっ!!」 さわやか笑顔でつっこみも冴えわたってますねー。そーゆーとこ大好きだよ。ヒロだけは中学から今まで唯一つるんでるヤツだから、俺のことも結構分かってくれてると思う。 「あんなに怯えさせちゃってよ。なんかした?」 「んー?多分ちゅーしたからかなぁ」 「へぇ〜・・・・はっっ!!??」 手に持った煙草をポロリと落とした。危ないよ!!俺は慌ててそれを拾い、地面にグリグリ押しつける。ヒロは気にする風でもなく俺の顔を凝視してきた・・・そんな見られたら照れるんだけど。 「なにー?どしたのー?」 「・・・・いやいやいやいやいやいやいやいやいや」 ヒロちん壊れちゃったよ。俺は先を潰した煙草をどう処理しようか悩んでいる。こいつはいっつもどこ捨ててんの・・・? 「いやいやいや・・・・・・え、ちゅーってあの、ちゅー!?木村にっ!?口ちゅー!?」 「うん?泉水めちゃ口笛ヘッタくそでさー一生懸命フーフーしてんのっ!くち突き出しちゃってさぁ、なんか・・・しちゃったんだよねー。あ、そんときの泉水の写メ見る?マジウケるよ」 むふふ〜って泉水の写メをヒロに見せてあげた・・・・・のに、全然見てくんない。一人でぶつぶつ何かつぶやいてる。仕方ないから自分で見よう。・・・あー泉水のアホ面マジたまんないっ。 俺が携帯画面眺めながらにやにやしてると、ヒロにポンッと両肩を掴まれ正面から見据えられる。 「お前・・・・俺とちゅーできる?」 真剣な眼差し・・・え・・・・キモッ!!やっぱりヒロおかしい!!さっきから壊れっぱなしじゃん!! 「ヒロ・・・やっぱり若いときから煙草とか吸っちゃダメだと思うんだ。脳みそまでケムリが到達しちゃったんじゃないのかな」 きっと肺だけじゃなくて頭ん中まで真っ黒なんだ・・・心配だ。ヒロに合わせて真剣に、なるべく優しく言ってあげる。 「俺とちゅーできるかって言ってんだよ」 「できません。俺は女の子としかちゅーしたくありませんです、はい」 大丈夫か、ヒロ。今までさわやかボーイで通してたのが崩れちゃってんぞ?いくらなんでも男とはちゅーは無理だわー…まぁ俺ほどにもなると求めてくるヤツもいるかもしれんが・・・・・・・ハッ!!!! 「ご・・・ごめんヒロ。俺気付かなくて…でも、お前のことは友達としか見れ「違うわボケッ!!!!」 いってぇっ!!!チョップくらわしやがったっ!!! 涙目で頭を押さえる俺を見て、はぁ〜ってでっかいため息をつく。なんだよ〜。 「木村も男じゃん」 ・・・・んぇ? 「・・・・・・・・・うん・・・そーだね」 「じゃーはいっ!なんでちゅーしちゃったのか考えてみよっか!!」 手をパンパン叩きながら言ってくる。・・・・・なんでって?なんでちゅーしたかって??そりゃ・・・口笛下手くそな泉水の口が、ちゅーしてほしそうだったから?いや・・・俺がしたかったんだけど。唇が渇くのかたまに舌で舐めるとことか、出来ないのが悔しくてぷるぷる震えるまつ毛がかわいくてさ・・・・・ 「…ッヒロ・・・!!どうしようっ!?」 「なにがー?」 俺がうんうん唸っていると、いつの間にかヒロはまた煙草に火をつけ出していた。 気づいちゃったかもしれない!! 「泉水って実は女の子なんじゃねぇっ・・・!?」 「・・・・・・・・・・・」 しばらくヒロは俺と会話してくれませんでした。 大丈夫だよ。 ちゃんと分かってる。 多分、もう随分前から気付いてたんだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |