若者たち
11
ピロリロリ〜ン♪
「ふはっ泉水ぶっさいく〜目ぇ半開き!!保存けってー」
そりゃ不意打ちで撮られたら半開きにもなるだろ。次郎から借りた英語の課題を必死でノートに写しているときに、毎度毎度のウザい藤原君登場。てゆーか俺、写真とか撮られるのすげー嫌いなんだけど。
「今忙しいから話かけんな。つーか消せっ」
「え、ヤダ!かわりに泉水も俺を写メっちゃっていーよ♪あ!でもちょっと待って!キめ顔つくるから!!」
あーもー…マジで勘弁してくれ!次郎からのノート拝借時間はきっかり10分限定なんだよ!!すぐにでも携帯奪い取って撮られた写メを消去したいが、今はこっちのが重要だ。悔しく感じつつも、シャーペンを動かす手を止めることはできない。
「あ、俺もそれやってないや。次の休み時間に泉水の貸してー」
・・・・・・こいつ後でぜってー殴る。
「…っあー――…疲れる」
「おっさんだからなー泉水は」
っておーい!お前が原因だよ!!
5月も半ばに入り、もう少し経てば衣替えだ。駅まで歩く道のりも風が爽やかですごく気持ちいい。隣を口笛吹きながら歩くコイツさえいなければ、ルンルン気分でご帰宅できるよ。
「ねーアイス食べたくない?コンビニ寄ってこー」
「食べたくない。てかお前、あの写メ消せよ。マジで」
そうなのだ。あれから、どんなに怒鳴っても殴ってもこいつから携帯を奪えなかった。俺の間抜けな目ぇ半開きの顔は今もこいつのデータフォルダの中・・・。
「やだよー初めて泉水の顔正面から撮れたんだよ?いっつも顔隠しちゃうからさぁ」
「当たり前だ。写真嫌いなんだよ!いいから消せよな。俺の顔なんか保存しててもなんの意味ないだろ」
「あるよー見てたら笑えるもん」
こいつ俺の心をへし折りにかかってんじゃねーの?無邪気な顔しやがって…次郎とは違うタイプで傷をえぐってくるタイプだ・・・。そりゃそんだけ顔が良けりゃ写メなんてどうってことないんだろーけどさ・・・自分ではカッコ良くは全くないけど、ブサイクでもないとは思ってる。まぁ、コイツからしたら見てるだけで笑えるレベルなんだろーよっ!!
「・・・・いーよもう、好きにしろ」
「うん。好きにするー」
肩を落とす俺の隣で口笛をピーピー吹き続けている…ご機嫌マックスですな。あ、この曲聞いたことあるわ。最近CMでよく流れてる…歌手はよく分からないけどサビが耳によく残って、なんの曲か調べようと思ってたやつだ。
「お前口笛上手いのな」
「でっしょー?高音から低音までおまかせあれ〜♪泉水もやってみ?なんならハモれるぜっ!」
すげーけど、微妙に自慢しづらい技だな・・・でもハモってみてぇな。こーゆーどうでも良いことやるの好きだ。ちょっと乗ってしまった単純な俺。
「よし、いいぞ。さっきお前が吹いてたヤツな。お前ハモれよ」
「オッケ〜」
息を吸い込み、出だしの音程を頭に思い浮かべる。せ〜のっ・・・・
プヒュー―――――・・・・・・…ッ
「・・・・・・・・・・・・・・・」
一気に顔が熱くなった。
「・・・・・・ブッッ!あはっ・・・あはははははははっ!!!!…いずっいずみっ・・・今、ヤッベ!!ちょー不発!!あははははは!ヤベーマジウケる泉水かわいすぎーっ!!」
腹をかかえて、涙を流しながら大爆笑する藤原・・・・
「ちっ・・・ちげーよ!今のはいきなり始めたから、う、うまくいかなかったんだよ!!・・・っくそ!笑うなーーーっ!!!!」
自分でも真っ赤になってしまっているのが分かって
すっげぇ悔しい。いまだに笑いが止まらない藤原を無視して、俺は前を向く。くっそ!絶対リベンジしてやる!!
プフー―…プスー――・・・…
俺ってこんな口笛下手くそだった?
プヒョー―…プスー――・・・…プヒュー―――・・・・・・・・…ピ…むにゅっ
唇に、やわらかい感触と、目の前にイケメンどアップ。あーあ…今うまく音出そうだったのになぁ。
ピロリロリ〜ン♪
「正面顔もう一枚ゲーット!」
・・・・・・・俺今何された?
携帯画面を眺めながらニヤニヤ笑う藤藤原の顔を眺めながら、俺はしばらく動けなかった。
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