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小説
コウノトリの憂鬱。A




「コ、ノトリ…コウノトリさん、が、遠い、国…から、俺のこと連れて来た…んなら、お、俺はっ、母さんと、なんにも、つながってないよぅ…っ」
「…!」
「や、やだ、やだよう…う、うああ、ああーん…」

まるでこの世の終わりが訪れたかのように声をあげて泣き始めたカカシの前で、サクモは完全に固まってしまっていた。
まさかそう来るとは、全くの計算外だったのだ。


どっどうしようっ?
どうしようどうしよう!

えっええ?どうしようっ!??


わんわんと泣き続けるカカシに、サクモも心持ち泣きたくなりながら、わたわたと意味もなく手を動かした昼下がりのあの日から。

気が付けば、もう10年近くの時が経っていた。




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「うん、あれには困ったね。敵地に一人で放り出されても、あれほどは困らないと思うよ」

かろん、と麦茶に溶かされた氷が鳴った。
グラスに付いた水滴を指で拭ったサクモが、何処か遠い瞳をして柔らかく微笑んでいる。
ミナトは出されたグラスを丁寧に扱いながら、そっと麦茶を飲み下した。
冷たい感覚が胃を満たすのが酷く心地良い。

「カカシにも、そんなことがあったんですね…当然ですけど」
「確かに…あの子、外では少し大人びた振る舞いをしてるからね。そういう風には感じさせなかったかもしれないな。でも…でもね、それよりね…っ」

耐え切れない、とばかりにサクモはずいっと身を乗り出した。
滑らかな銀の髪がさらりと肩から零れ落ちる。

「とにかく、すっごく可愛いかったんだよねぇ…っ」

母さんと繋がってないのが嫌だって…!もう本当にぎゅうって抱きしめてぐりぐりしたいくらい可愛かったんだよっ?いや、流石にカカシが真剣過ぎて出来なかったんだけど!

そう捲し立てるサクモに、『そんな貴女が可愛いですよ』という言葉を笑顔の内にしまい込んだミナトはゆっくりと続きを促した。

「それで…結局、どうやってカカシを納得させたんですか?」
「あ、それね。夜、寝てる間にコウノトリさんが父さんと母さんから血を摂っていって、そこからカカシができたことにした」
「うわあ…コウノトリさんハイスペックですね」


木ノ葉の里でも1、2を争う有能な忍夫婦から血を奪って去っていくとは…というか血から子供なんて医療忍者もびっくりな技術…いや、もちろん嘘だけれど。

むしろ、それを混乱した頭で考えたサクモさんがすごい。


ミナトが可笑しそうに小さく笑うと、家の戸が開いた音がした。
遅れて、控えめな「ただいま」という声が聞こえてくる。

「帰ってきたみたい」

サクモが麦茶のボトルを持ってミナトに軽く笑い掛ける。
ミナトもそれに応えるようにひとつ頷いた。

「「さて、どういう風に話してあげようか」」


今の可愛い話をね?


そう、まるで示し合わせたかのように呟いて、サクモとミナトはカカシがリビングに入ってくるのを待ったのであった。







Fin
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突発的に思い付いたので書いてみました。お祭り第6弾です。
そして、いつもながらに超管理人的木ノ葉の里仕様になっております。


ええまあ、あれです。

一度は通らなければならない道じゃないかと。(笑


というか、サクモさんのだん…むしろ奥さまですが、彼女も忍者だったんでしょうか?

……とりあえず、忍ということでここはひとつ!←



感想お待ちしてます!






2009*0820 玖瑠璃

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