CHILD GARDEN
look at me straight 1
揺れなかったと言えば、嘘になる。
まっすぐな目をした男の子。まっすぐに好意を向けてくる男の子。
嬉しくなかったと言えば、嘘になる。
でも、
because YOU are a me look at me straight
休み明け、覚悟はしていた。
けれど、これだけ覚悟していたとおりのことが起きると、なんだか馬鹿馬鹿しくなったし、笑うしかなかった。
杉浦君と私は、なんだかもうすごく仲のいいカップルみたいに言われるようになっていた。
夏休み中、水泳部以外で会ったのは二回だけ。それも、どっちも杉浦君に誘われて、杉浦君の借り切ったレーンで泳がせて貰っただけのこと。でも一度、プールの前のバス停で一緒にいるところを見られてしまったのだった。
夏休みだというのに、ふわふわと噂に尾ひれが付いて、新学期が始まる頃には、きちんと、と言いたくなるくらい、みんなに広まっていた。
「甲斐ちゃん杉浦君とつきあってるの?」
新学期一日目にして、すでにその問いかけは三回目で、普段はそれほど話もしないクラスメイトまで、その問いに便乗する形でまわりを取り囲む。
「つきあってないよ」
冷めた気持ちで、ただ淡々と答える。でもちゃんと笑って。
夏休み中、圭司と会った回数の方がよっぽど多かったのに。そんなことを思った。
「杉浦君にだって好きな人とかいるかもしれないじゃん。迷惑になっちゃうよ、やめてあげてよ」
一番無難な答えだと思った。好きじゃない、とか、迷惑だ、とか言い切ったら今度はよくない噂になるし、相手に迷惑だって言われてそれでも盛り上がるなら、それはもう私の問題じゃないし。
けれど、予想に反して、きゃーっと歓声が上がる。耳にいたい黄色い声。
「杉浦君もおんなじように答えたんだよ!」
「両想いなんじゃない!?」
「応援してるね!」
甲高い声で情報を投げて置いて、本人たちはきゃわきゃわと盛り上がりながら私の前から離れていく。 なんだか何を言っても無駄な気がして、 追いかけてまで否定するエネルギーもなくなって、ひとつため息をついた。
そうか。杉浦君もか。
それだけ思った。
杉浦君もおんなじように大人な回答をして、そして、おんなじように盛り上がられてるのか。
そう思うとちょっとおもしろかった。
机の中身をさくさくと鞄に詰めて、私は教室を出た。
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