CHILD GARDEN
different from myself 1
甲斐の夏が終わるのを、俺はただ、見ていた。
誰にも気付かれないように。
からかわれることのないように。
そんなことにこだわっているうちに、隣には自分でも将高でもない誰かが立ってしまうことくらい、少し考えればわかったことなのに。
Because different from myself too
「加藤?」
呼びかけられた声に、あまり聞き覚えがなかった。それでもゆっくりと振り向いてみると、ああ、と声が出た。
「えっと、杉浦……だよな。水泳部の」
「そう」
日焼けした肌に、白い歯。
まるで、理想のスポーツマンを絵に描いたような笑顔だった。さわやかでまっすぐで、臆面もなくて、人見知りもしない。
「県大会まで行ったんだろ。おめでとう……か、それとも、残念だったな、か、どっちがいい?」
甲斐が言っていた。
県大会の決勝まで残ったんだよ。
でも、そこで残れなくて、杉浦君、泣いてた。
そんな話を、電話で、した。
「残念の方かな。ベストが出てりゃ、勝てたし」
杉浦の視線が、窓の外へと向けられる。入道雲の輝く夏の空。
自分たちが立っているのは、涼しい、涼しい、建物の中だった。
夏期講習の初日、エントランスで、俺たちは多分初めて、話をした。
「そっか。残念だったな」
「おう。サンキュ」
横顔にかけた声に、杉浦が向き直って、笑った。
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