CHILD GARDEN
could not be with 1
最後の夏だった。
どうしようもなく、最後の夏だった。
跳ね上がる水しぶきと、青い空と白い雲、そういうものを、愛してた。
心から、愛してた。
Because I could not be with two people
甲斐、と、杉浦君の声がした。
確かにした。
一番外側のコースを泳ぐ私を、ちゃんと、応援してくれる声がした。
ターン。
自分の順位はわからない。ただまっすぐ、まっすぐ、どんどん進むことしかできない。
甲斐、甲斐頑張れ、もう一度杉浦君の声。
決勝八人。
そのうちの六人が、上の大会に行ける。
一番外側のコースってことは、予選のタイムが一番遅かったってことだ。
六人に入れない可能性が、一番、高いってことだ。
わかってて、スタートした。
観客席に圭司がいる。
それも知ってた。
残り五メートルを告げてるカラフルな旗。
そして、指先が、触れた。
立ち上がって、他のレーンを見る。
似たり寄ったりのタイムだったのか、他のレーンの人たちも、まわりを見回してる感じだった。
水からあがる。
じりじり、肌を焦がす太陽の光。
観客席を見た。圭司がいた。小さく頷いたのが見えた。それは、大丈夫の合図なのか、それともよくがんばったの合図なのか。わからなかった。でも、私も、頷いた。
涙が出た。
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