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CHILD GARDEN
still connected 1

 冬。
 三年生の受験ムードに、自分たちを重ね始めた冬、決断を急に迫られた冬、そして、まだ隠れたままの二人。

Because it seemed ties we're still connected

 部活にはもう「先輩」がいない。同じように、もうすぐ学校内に「先輩」がいなくなる。
 それを否応なしに意識させられるようになった。
 繰り返される進路希望調査、最後のとつけられる行事も増える。
 来年は同じクラスになれるだろうか、と、俺はぼんやりと昇降口で立っていた。さむいのにわざわざ、昇降口で人を待つ。体力づくりと称して水泳部が学校の周りを走っているのを見るために。まるでストーカーみたいな自分。
 チームで、というよりは、みんながそれぞれのペースでノルマを達成していく。甲斐はいつも、前の方を走る。ゆっくりとお喋りしながら走る女の子たちを注意するでもなく、意識するでもなく。
 でも俺は知っている。甲斐は、真剣に勝とうとしているのだ。次の夏を。
 甲斐がこちらを目にとめて、ふと微笑んだ。唇だけで。真冬だというのにじんわりと上気し、汗をかいた肌の匂いまで届きそうな至近距離をすり抜けて、甲斐はなめらかにカーブを描いて、校舎の影に消えた。
 待ち人が来る前に甲斐がもう一度まわってくるか、それとも、と思う内に後ろから肩をたたかれる。

「遅いよ」

 そんな風にからかいながら、俺は隣の義康と歩き出す。
 振り返ることはしない。誰にも気づかれないように。
 今日の夜、電話をしよう、と、心の中でだけ誓って。



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あきゅろす。
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