短編置き場 HAPPY Merry Christmas! クリスマスイヴだというのに、待ち合わせの時間は守られない。 既に30分も過ぎているのに連絡もない。メールの一本ですら。 (しょーがない……) むなしいため息が漏れるけど、いつものことなのもわかってる。イヴだからって特別扱いされるわけじゃないことも。 (んだ、けどね……) 仕事中は携帯電話を身につけていない彼とは、連絡が取れないこともしばしば。それが当たり前、ちっとも珍しいことじゃない。 それもわかってる。 (わかってはいるんだけれど、ね……) それでもため息ぐらいつきたくもなる。責めたくないけど責めたくもなる。 まわりはきらきらイルミネーション、集う恋人たち、浮かれた音楽、美味しそうな湯気の匂い。 (淋しいのは、) (仕方ない、じゃない?) ひとりで見るイルミネーションは美しくても味気ない。 もうひとつため息をついて、大きな光のツリーを見上げた。てっぺんの星がひどく眩しくひかるのを見ながら、口角をあげた。 少しでも笑った顔に見えるように。 淋しい顔に、見えないように。 (――大丈夫、) (絶対に、くるもの) マフラーを巻き直して、ぴんと背中を伸ばして立った。 さあ、どうやって、時間をつぶそうか。 @寒いから、カフェでコーヒーでも飲もう→ Aストリートミュージシャンの歌を聴きに行こう→ Bじっくりツリーを見よう→ C少し離れて遠目にツリーを見守ろう→ [次へ#] [戻る] |