短編置き場
水月市7
私は、いつからこんなんなんだろう。
どうしてこんなに強くなってしまったの? かわいらしくなくなってしまった? 大人のふりがうまくなったの?
余裕見せて、笑えるようになってしまった?
瞳、見開いたまま、泣けるようになったのは、いつだったろう?
見据える瞳を、覚えたのは、いつだった?
「……お姉さん?」
みなちゃんが、私に声をかけた。私はにこりと笑うふりをした。
「大丈夫。ちょっと意識とんでた。昨日読んだ本、面白くってさ」
「えっ、お姉ちゃん昨日2時上がりでしょ!?」
「ん、もう続きが気になっちゃってさ」
かわいらしいちいちゃん。かわいらしいみなちゃん。かわいくない私。
私たちの共通点は、本が好きだということ。
そして、歌うのが好きだということ。
私たちはそれからしばらく、昨日読んだ本について話していた。
ゆるやかに壊れていく、恋愛もの。
「……私は、彼のために、狂えるかなぁって、思った」
しいちゃんの、ために。
「好きな人のためでもさ……、狂ったり、できるのかなぁ……」
――否、きっと私は狂えないだろう。淋しいほど冷静かもしれない。たとえ別れても。……涙の一粒くらいは、流せるだろうか。それでも私は、大人の笑い方で、あきらめるのだろうか。見開いたままの瞳で、なくのだろうか。そんなふうに思う。ぼんやりと。
別れる理由はなんだろう。きっとわたしたちは、友達になるのだろう。私たちは、さよならとは言わないだろう。
強がって強がって強がって、平気なふりをして、私たちは一緒にいるだろう。
……別れる理由は、私にあるのだろうな、と、ふと、思った。
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