短編置き場
水月市6
みなちゃんは、水みたいだとおもった。
水みたい。
色んなものを内包して、色んなものをその中に持っている。私と、まともに付き合おうとするだけの優しさで、色んなものを内包している。
ゆら、ゆら、ゆれる、砂糖のなみみたい。
幾重にも重なって、ぐにゃ、ぐにゃ、全部吸い込んで――溶かす。
すごいひと。
煙草のけむり、ふうっと風に吹かれて、揺れた。……息をはいた。白い息。煙。
ゆらりゆらり。
可愛くない、けむり。
「お姉ちゃん、かっこいいね!」
ちいちゃんは、無邪気に笑ってそういった。輝く、水っぽい瞳。可愛い、けなげな瞳。
どうか、このかわいらしいひとたちに、本心がばれてしまわないように。
こんなにイヤなやつなんだと、ばれてしまいませんように。
そう願って、祈って、努力した。
どうか、笑えていますように。
ちいちゃんは、市みたいだ、そうおもった。たくさんのひとを、ひきつけてやまない、そういう人。このひとを、本気でキライになれるひとなんて、きっといないだろう。
マーブル模様。それから、ひとつに統一されていく、色。そういうの、できるひと。
まとめあげて、その場をやわらかくするひと。
溶かして、一色にして、優しくする人。
かわいらしいからこそ、すごいひと。
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