短編置き場
鎮まってお願いだから 2
「……さぁて、まずは今まで隠してたのはペナルティよね」
(ええ!?)
「しかも私テスト前なのよね」
(マジで? 俺のとこもう終わってるし)
「知ってるわよ、先週その話、したじゃんか。あんたホント人の話聞いてないわね」
(……ごめん)
ふと、彼の声音が、沈む。長い間、友達だったからこそ伝わる、一瞬の本気のごめん。私に対する、私の恋に対する、彼の精一杯の、謝罪。
(……ごめんな)
本気のごめんもわかっているよ、と、ほんの少しの間の沈黙で言外に告げる。
大丈夫、わかってる。
ありがとう、
ありがとう、
ありがとう、
優しい静かな絶望をくれて。
ありがとう、
ありがとう、
ありがとう、
何も失うことなく、終わらせてくれて。
「じゃあとりあえず」
だから、もう、
鎮まれ、鎮まれ、
鎮まってお願いだから。
「差し入れと家庭教師かな」
なるべく声を震わせることなく、何とか伝えた。
(わかった、何か買って、今から行く)
「やった、数学ね」
鎮まれ涙、鎮まれ想い。
鎮まってお願いだから。
(買い物してくから遅くなるけど)
涙も、想いも、お見通しなのだろう彼の声を、私は聞き、うん、と頷く。
(ちゃんと勉強してろよな)
「邪魔したくせに」
(うるせ。じゃあ、)
「うん」
(あとで)
「はいはい」
ふつ、と電話は切れ、ぷーぷーと終話の音が鳴る。携帯を折りたたみ、私は今まで座っていたベッドに寝ころんだ。
ありがとう、
ありがとう、
ありがとう、
優しい静かな絶望をくれて。
ありがとう、
ありがとう、
ありがとう、
何も失うことなく、終わらせてくれて。
あなたがここに着くまでに、
きっときっと、鎮めるから。
涙も、想いも、鎮めるから。
だから今だけ。
誰にも聞こえないようにだけ、
最後に泣かせて。
最後に言わせて。
あなたのことが、大好きでした。
20090111
今思えば、片思いの頃がいちばん恋を頑張ってたような気がします。そんな気持ちで、書きました。
お題:確かに恋だった様
[*前へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!