present for you 金の少女 2 「セイちゃん」 ミィの声は、柔らかく僕を呼んだ。 僕はやっと、視線を動かしてミィを見る。大きな瞳が、静かに、優しく、けれど、不思議そうにまるくひかって、それを見たらまた、何も言えなくなった。 ミィはしずかに尋ねる。 「――さわると、こわれちゃうの?」 しずかに、しずかに。 僕が何かを言うより早く、ミィはもうひとつ、問いを投げた。 「さわっても、わからないの?」 それは、思っても見なかった問いで、僕はそっと、首を振る。 「そんなことは、ないよ」 僕はそれだけ答えて、そして、少ししてから、付け足した。 「僕が人間と違うのは、――何のぬくもりもないってことだけ。ミィが欲しいあたたかさは、僕にはないよ」 ミィは、 「セイちゃんのばか」 と、言った。ほんのすこし、くちびるをつきだして。 呆気に取られた僕に、ミィは笑う。 「ばか」 そういって、ミィの手は、たやすく僕の手をとらえた。 「!」 びっくりして逃げ腰になった僕を許さないとでも言うように、ミィはその手をぐいと渾身の力を込めて握った。握り締めた。 「ミィ」 「やわらかいね」 そうして、手をつないだまま、先に立って歩き出す。 「つめたいね」 僕もつられて、歩き出した。 「でも、ずっとつないでたら、あったかくなるでしょ?」 そう言って、ミィは、笑った。 僕は静かに目を伏せる。目の前の小さな背中に尋ねた。 「ミィは? ミィはそれでいいの?」 ミィが振り返って、微笑む。 「どうして?」 あたたかい手、あたたかい、からだ。 「ミィが欲しいのは、体温だけじゃないんだよ」 「ミィ?」 「ずっとわかってた。ほんとはわかってたの、体温だけじゃダメだって。あたたかさだけじゃ、だめだって」 そしてまた、立ち止まる。 「でも何もないより、そのほうが、ずっとよかったから。……でも、ね」 ミィが笑って、続ける。 「でも、セイちゃんは、」 ミィが、笑う。 はなやかに。 あざやかに。 「体温以外はすべて、くれるでしょう?」 きれいに、きれいに、笑ったから。 「うん。――うん、きっと、全部君に、あげる」 誓った。 目の前の、眩しい、少女に。 誓って、そして、 並んで、歩き出した。 20100403 9900hit、涼華さまへ! お題:せつなめで、ハッピーエンド お待たせしてすみませんでした! そして続き物で書いてしまってすみません…。 苦情等、いつでもお待ちしてます…。 [*前へ] [戻る] |