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短編小説
1+1=2


当たり前の朝が来た。


それを投げ出すかのように毛布を蹴った。

「加奈子〜起きなさーい。」

一階から声をあげる母は今日もピリピリしていた。


起きている時に起きろと言われると、かなりムカつく。

「…あ。」

そんな当たり前にまた気がついた。


「朝から最悪…。」


そんな事をボソリと言った時、
妹が加奈子の部屋に入って来た。


「勝手に入って来ないでよ。」

「じゃあ私の部屋つくってってお母さんに言って。」

「…。」


学校の準備を黙々としている妹をベットの上からただ眺める加奈子。


「ねーあんたが普通に部屋持ってたらこんな部屋ごちゃってないよね。」

「は?」

「いや…普通に部屋があったらの話。うちの部屋に普通に物置かれるの嫌なんだよね(笑)」

「…普通普通ってうるさいんだけど?」

少しムッとした口調で妹が話始めた。


「普通って口癖だけど、じゃあ加奈にとって普通って何?」

「いきなりどーしたし(笑)だからぁ〜普通って言うのは…」

バカバカしい質問に半笑いで答えようとした。

「えっと、ね…。」

いつも使っている言葉なのに答えがなかなか出ない。


先に声を出したのは妹だった。

「部屋があるのは普通じゃないよ、ないのも普通じゃない。この世に普通なんかないんじゃない?」

「いや訳わかんないんですけど…」

「だからぁ〜…じゃあさ1+1=2になるのは何でだと思う?」

「えっ何??ボケ?いまいちノリが掴めないんだけど…」


そんな時、
一階からまたもや母の声が廊下に響いた。




下に行かないとそろそろ母までもが部屋にくるだろう。


「まーいーや。どうせ加奈子に説明してもバカだからわかんないよ。」

妹のほうが頭が良いのは事実だが、
実際に言葉に出されるとムカつく。

「わかるよ!なんで決めつけんの??1+1くらいできるもん!!」

「そっち!?(爆)」

「えっどっち!?」

「本気だから怖いわぁ〜www」


妹はすでに支度を終え、
笑いながら一階に行ってしまった。


加奈子も急いで下に行くと、
机の上には冷えきった食パンと生温かいスープが出迎えてくれた。


「じゃあ今日帰らないから。夜カギちゃんと閉めるのよ!」

共働きの母は、ホテルの仕事でいつも帰って来ない。


「ねーさっきの途中まで話してやめるとかモヤモヤするんだけど??」

話を戻したのは以外にも加奈子のほうだった。


「あ〜1+1=2の話ね(笑)」

「1+1=2!!これ当たり前にわかる!!!!」

覚えたての小学生が自慢するかのようなどや顔は
余りにもバカっぽかった。


「ははっwww1+1=2 これは単純計算なの、でも単純計算が本当の正解かなんて誰にも解らない。」

「…単純計算以外何があんの?」


妹の難しい話を理解するべく眉間にシワをよせながら耳をすませた。


「単純計算以外なんて無限にあるよ??例えばぁ
1+1=61 1分+1秒=61秒だから。」

「ん??」

眉間にシワをよせ頭をフル回転させても解らない加奈子に
わざとより難しい答えを出す意地悪な妹。

「他にも1+1=600000000 ジャンボ宝くじ1等+1等=6億円だから。」

「えっ1等って3億円なんだ!すご!!」

「だからそこなんだ(笑)」

よく解らないけど、
なんとなく解った気がした加奈子は眉間に手を当てた。

「なるほどね〜…」

「本当に解ったぁ??(笑)」

「たぶん…」

「だから言いたい事をまとめると1+1=2なのは普通じゃないって事よ。」

「そっか今普通について話してたのか。」

「もう突っ込む気もおきないよね。うん。(笑)」

「え??」

「だからこの世に普通なんてない。今も明日も明後日も普通じゃないの。」

加奈子には、また話が難しくなってきたように聞こえた。

「人生は教科書みたいに答えが決まってないの!!だからせめて答えがある問題くらい解けるようになろうね〜加奈子(笑)」


妹にバカにされるのはいつもの事だし、
母が今日帰ってこない事も、
生温かいスープも、
遅刻決定な事も、

いつもの事だけど
なんだか輝いて見えてワクワクした。




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あきゅろす。
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